第2話

 私は朝早く会社に向かい、上司に謝罪しに

行った。何故私が謝りに行かなければならないのか分からないが私が謝ることで全て丸く収まるのだ。あの金髪の男にはあの言葉を言われた

直後に解散している。だから別になんかあったとかその後彼と二人で飲み直したとかそんなことはないのだ。

「あの…昨晩はすみませんでした!」

「と、戸枝か…」と何故か狼狽える上司。

「大丈夫でしたか?お怪我はありませんか?」

と心配している風に私が問いかけると上司に

意外な言葉をかけられた。

「今まで色々言ってすまなかったな…これから気をつけるよ…」と私との会話を早く終わらせようとする上司に違和感を感じた。

それだけでなく今日は会社の皆が私に冷たい視線を向けてくるのだ。


 仕事終わりに「はぁ…」とため息を吐くと

同期から「俺、お前のこと見直したぜ」と言ってきた。私は意味が分からなかったが同期が

言うには私が上司を殴ったみたいになっているらしい。あの金髪男のせいでまるで私が上司に

向かって暴力を振るったような話になっている。全くもって心外だ。私がそんなこと出来るわけない。私はあの居酒屋に行けばあの金髪男に会えるかもしれないと直行した。


 ガラッと戸を開けて暖簾をくぐるとあの男がいる。「おい」と私が声をかけると待ってましたとばかりにその男は瓶ビールを頼む。

「まぁ飲めって」とまるで私が何を言いたいのか全て見通したような顔をしていた。

「なんであんなことした」

「だからあれは戸枝さんのことを思ってさ」と彼は言う。

「なんで知ってんだ…」。目の前の男に急に苗字を言われて一気に恐怖が私の体を駆け抜けた。「一体何者なんだ」。私がそう問いかけると彼は言う。

「俺は戸枝さんの全てを知ってるよ笑」

「何が目的なんだ…」

「じゃあ戸枝さんにも俺のこと知ってもらおうかな笑」と彼が微笑む。まるでその表情は

この世界を自由に生きているような顔だった。


 

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