コントロール

@johnny773

第1話

支配とは何か?それはある者が自分の意志・命令で相手の行為やあり方を規定・束縛すること。更に広く人以外のものでも、他に強く働いてそれを左右することだ。今の現代社会において支配という言葉はあまり似合わないかもしれない。しかし、自分自身に問いかけてほしい。

自分は本当に支配されてないのか?他者の命令によって自分の意思を捨ててないのか?

もし自分の意思では無く、他者に仕組まれた世界で生きていたとしたら…?


私が彼に出会ったのは数週間前のの居酒屋だった。私は上司の愚痴を聞くだけに飲み会に来ている。「戸枝!」と私の苗字を怒号する酔った上司の怒りを鎮められない自分にイライラしてしまう。「男の癖によぉ〜…」といつもの決まり文句で私を罵倒する。両親にこのことを相談しても「そのうち慣れる」と言われるばかり。

しかし、実際のところ私の仕事が出来ないから怒られる。当たり前なこと。そう思っていた

時だった。怒っている上司の顔に力強く握った

拳で思いっきり殴る男が私の視界に入ったのだ。鼻血を出しながら倒れる上司を見つめる私の手首を強く握りしめて彼は私を店の外に連れ出して走る。


事が急すぎて彼の姿は金髪のパーマがかかった半袖短パンにサンダルを履いた表情から分かる

この世の全てを楽観的に楽しんでいるような男だった。「ちょっと待ってくれ!」と彼に話しかけるも彼は止まらない。私は彼の手を振り解くと私たちは走るのをやめて止まり、白い息が上がる。「一体君はなんなんだ!なんで僕の

上司を殴った!」「なんでって苦しそうだったから」。息切れしているからか思考が回らない。「あんな苦しそうな表情してたら助けるしかないでしょ」と彼は続ける。

私は冷静になり、上司を置いてきて怒り狂った上司がこのことを告発して仕事がなくなったらどうしようと不安が押し寄せてきた。

「どうしてくれんだよ!僕の仕事がなくなったらどうすんだよ!」と彼に訴えた。

「別にいいだろ…笑」とヘラヘラと笑う彼に

腹立たしい気持ちすら無くなっていた。

そして私は彼のこの言葉を絶対に忘れることはないだろう。「俺が支配のない世界に連れてってやるよ」。そう言った彼の表情は私には眩しすぎた。

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