第4話 魔法と武闘
ファブニルとルースに魔法を教わり始めてから何日が経過したであろうか。
気が付けば俺は二人から教わった全ての魔法を使えるようになっていた。
「終焉の焔」
俺がそう告げた瞬間、前方が真っ赤に染まる。だだっ広い部屋の中を埋め尽くすほどの巨大な炎。
これでもまだ抑えてる方なんだけどな。
「素晴らしいです、グリフ様。魔法についてはもう教える事はありませんね。後は自由に魔法を作り変えていき、ご自身にあった魔法を見つけるだけです」
「おお! ありがとうルース!」
長きに渡る魔法の指導が終わりを告げ、俺は達成感に満ち溢れたまま思わずルースの手を取って喜ぶ。
「か、可愛い」
「うん? なんか言ったか?」
「いえ! 何も申し上げておりません! 可愛いだなんてそんな事、言う筈がありません!」
うん、それはそれで傷付くな。いや、自分でも可愛いとは思ってないけどさ、まだ子供だからそれなりに可愛いらしさとか……まあ、無いか。
「グリフ様、次は私の武闘の卒業試験を受けて貰いますよ? 準備は良いですか?」
そう言ってニヤリと笑みを浮かべるのはファブニルである。
実は剣術には才能がないからと途中からファブニルに武術について教わっていたのだ。
そしてその最中で俺が異常に防御が固い理由を知った。
どうやら武気と言うものが存在するらしく、それを常に身に纏っていたのだと言う。
武闘といって全身にオーラを纏って力を強化する戦い方があるのだが、それをするのに必要なのが武気と呼ばれる物だという。
言うなれば魔法を使うために必要な魔力って感じだな。
武闘には下から順に無色、白色、黄色、紫色、赤色って感じで位分けがある。
そして今日は赤色の武闘を纏えるかどうかっていう試験となる。
「いくぞ」
俺は深呼吸をすると、スッと目を閉じ、全身に武気を張り巡らせていく。
そして全体に武気が張り巡らされたと感じた瞬間、思いっきり力を込める。
すると俺の纏っていた武闘が無色から白色と徐々に変化していき、やがてそれが炎の様に真っ赤な色に染め上がる。
「流石でございます、グリフ様。しかし試験はこれからですよ!」
そう言うとファブニルは金色の武闘を纏い、こちらに迫ってくる。
実は武闘には赤色以上もあるらしく、その先は当人にあった色へと進化するらしい。
俺は今はまだ無理だけど。
「ハアアアアッ!」
俺は赤色の武闘を纏ったままファブニルへと迫る。
そして同時に拳を前に突き出す。
二つの拳が合わさった時、空気がゆらりと揺れたかと思えば、凄まじい衝撃波が辺りに響き渡る。
そんな事は気にせず、俺とファブニルは拳を交わし合う。
「武闘だけでなく、武術も成長しておりますね! では、これを防げますか?」
そう言うと、ファブニルは一歩後ろへと下がり、何かの構えを取る。
何だその技、知らねえぞ。
ファブニルの右手に金色の武気が集まっていき、それは放たれる。
「八王龍爪!」
それは極大の一撃。俺は腕を交差してそれを防ぐ。
刹那、凄まじい衝撃波が全身を駆け巡っていく。
まるで何かに引き裂かれ続けているような不思議な感覚。
それに耐え切れずに俺は一歩、二歩と後退する。
やべー、このままじゃ負ける。
「流石にまだ早すぎましたか」
そんな声が俺の耳へ届いてくる。
「まだ、まだだ!」
負けてたまるかと血管が浮き上がる程に全身に力を込める。
すると、俺が纏っていた赤い武気の色が徐々に変化してゆく。
「うおおおおおおっ!!!!」
その瞬間、俺の全身を真っ黒な武気が纏う。
突然体が軽くなったような感覚。
そして赤色へと進化した時とは比べ物にならない程の全能感。
俺はその勢いのままファブニルから繰り出された攻撃を消し飛ばすと、ファブニルへと迫る。
「……お見事です」
そんな言葉が掛けられた瞬間、俺はピタリと動きを止める。
「え、合格? 倒してないのに?」
「もちろんでございます。今のあなたと拳を交えれば私の体がただでは済まなくなりますよ」
にこやかにそう言うファブニル。いや、流石にまだ俺が勝つなんてのはお世辞なんだろうけど、分かってても嬉しいな。
「ご苦労様でした、グリフ様。これにて魔法と武闘の修練は終わりです。早過ぎますけど」
「おう、ありがとう二人とも」
二人のお陰で結構強くなれた気がする。まあ、過剰に褒めてくれるから本当の実力は地上に出たらまだまだなのかもしれないけどさ。
「さてと、それじゃあ次はダンジョンを地上まで伸ばさなきゃな」
俺の目的はあくまで母上の仇打ちには変わらない。
そしてそれを達成するにはここからダンジョンを成長させて地上へ到達させる必要がある。
いやちょっと待て。肝心な事を忘れてた。
「……てかどうやってダンジョンを成長させるんだ?」
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