第18話 精霊の裁き
「な・・何故ですか!陛下!何故!」
驚き慌てたペルニラは果敢にも国王に向かって声を上げたが、国王はすでにペルニラの存在など無視している。ペルニラの娘マリンは涙を流しながら訴えた。
「殿下!これではお話が違います!殿下!殿下!」
すると、マルティン王子は肩をすくめながら拘束を受けるマリンを見下ろした。
「君は褒賞として行方不明となったゼタールンド伯爵家の令嬢ビビを探してくれと言ったではないか!」
王子はエドヴァルトにエスコートされるビビの方に笑顔を向けた。
「言われた通りに、きちんと見つけているだろう?彼女は、君の母親や君自身によって、ヘレナ夫人と同じペリギュラの毒を飲まされた。伯爵と嫡男のノアが領地に行って不在なのを良いことに、毒で弱ったビビ嬢を下働きとして酷使し、度々暴力を振るっていたよね?」
そこで貴族たちはエドヴァルトがエスコートしている令嬢が問題の伯爵令嬢ビビだったということに気が付いて、動揺と興奮を隠しきれない様子で騒めき出す。
「君にとってビビ嬢は邪魔な存在だから、男遊びが激しくてどうしようもない令嬢だというように噂を流した上で邸内に閉じ込め、毒を盛って痛めつけた。エドヴァルトが見つけた時には井戸の縁に倒れ込んで虫の息となっていたと聞いているよ」
「な・・なんですって!」
そんなことは全く知らない伯爵家当主のニコライが、驚き慌てた様子で顔を上げる。
「そんな状態だからエドヴァルトは黙って公爵邸に連れて帰ったんだけど、君たちは体が弱ったビビ嬢が水を飲もうとして誤って井戸に落ちたのだと思ったみたいだね。その時から大雨が降り始めたから井戸の中まで探すようなことはしていないみたいだけど、その井戸を封じて全てをなかったことにしていることは確認済みだよ」
すると、後ろにいる貴族令嬢たちが驚きを隠せない様子で声を上げ始めている。
「嘘でしょう!だって、居なくなったビビ様を必死になって探していると言っていましたよね?」
「私も聞きましたわ、ビビ様は男遊びにのめり込み、下町に消えてしまったようだから自分が必死に探しているって!」
マリンが唇から血が出るほど噛み締めていると、マルティン王子の隣に立つクリスティーナ王女が声も高らかに言い出した。
「この悪女は、ビビ様を利用して、自分を哀れにも果敢に従妹を探し続けるヒロインのように偽ったのです。精霊の怒りがこれほどまでに大きくなった一役を担ったのは間違いない事実」
王子はため息を吐き出しながら言い出した。
「この問題に対応するために森の賢者様に王国まで来て貰っている訳だが、元凶となるお前や母親は死刑一択しかないだろうな」
「はあ?死刑?嘘でしょう?」
マリンが仰天して声を上げると、クリスティーナがため息を吐き出しながら言い出した。
「嘘なわけがありません。過去に精霊の怒りを買うことになったハルスラン3世は、秘密裏に処刑をされることとなりました。一国の王でさえ、精霊の怒りを収めるためにその命を使うことになったのですから、今回はどれほどの命が必要となるのやら・・一族郎党すべてを死刑ということもありえるかもしれませんね」
貴族たちのざわめきがより一層大きなものとなる。高位貴族は分家や寄子となる下位身分の貴族を幾つも抱えていることになるのだが、一族郎党全て処刑には、多くの家が加わることになるのかもしれない。
精霊の加護を偽って主張したのは6家の貴族の令嬢たちであり、その6家も処罰を受けることになる。その問題が末端まで波及するとなれば、どれほどの命が失われることになるのか想像も出来ない。
「皆の者、心配するでない」
王は王笏を床に突いて声を上げた。
「精霊の裁きには森の賢者も立ち会うことになるので、それほど苛烈な物にはならぬと考える」
王は這いつくばる目の前の貴族たちを見下ろしながら、
「精霊の裁きは苛烈だ、主だった者の処刑は免れないとは思うがな」
と、断言するように言ったのだった。
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ただいま『緑禍』というブラジル移民のブラジル埋蔵金、殺人も続くサスペンスものも掲載しております。18時に更新しています。ご興味あればこちらの方も読んで頂ければ幸いです!!
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