第6話
「私と四番隊で行く。従者は伴わず騎馬のみとする。残りは陣に戻り、副長の指示に従え。」
ユライアスは一瞬不満の色を見せたが、ナトヒムを渡河部隊に同行させることだけを進言し騎士団の残りを連れて速やかに自陣に戻っていった。
ナトヒムは面白い男だった。確かに楽天家ではあったが凡百の楽天家とは格が違う。今から行うカルダロサ救出はまさに命がけの行為であるのに、ユライアスもポウトレクもナトヒムの意向を確認することなく一方的に同行を決めてしまっている。そもそも、軍監とは司令部所属なのでナトヒムが騎士団の指揮に従う義務はない。にも関わらず彼はポウトレクやユライアスの決定に異を唱えることなく喜んで危険な作戦に付いて行った。決してその困難さを理解していないわけではない。命を落とすかもしれないことを承知した上で、胆力の強さなのか人生を達観しているのか、とにかく筋金入りの楽観主義でもって同行した。
偵察隊はポウトレク、ガンヒーク隊長率いる四番隊、ナトヒムで組織され、遠話兵二名が含まれた。
河の水量は少なくまた対岸からの妨害も無かったため、一行は難なく渡河できた。河を渡ると河に沿った道が南北に走っていた。下流方向、つまり北方向への道には松明が点々と配されていたが上流方向の道は真っ暗だった。罠であることは明白だった。シダラ族を奇襲した敵は全員が河のこちら側に戻ってきているはずなので目印として松明を残しておく必要はない。あまりにも見え透いているので、もしかすると罠を見破ったと思わせておいて実は反対方向に罠を配しているかもしれない、ポウトレクはそのようにさえ思った。
ポウトレクが石を使ってカルダロサの位置を確認しようとしたとき、松明の照らす下流から一騎の戦士が近付いてきた。シダラ族の戦士でケスラという若者だった。彼もカルダロサに遅れて渡河し、カルダロサを追ったつもりがこの先の道で待ち伏せにあって一人だけ戻ってきたということだった。
ポウトレクはケスラも隊に加えて真っ暗な道を河の上流に向かって進んでいった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます