元凶
魔力測定……名前の通り魔力、即ちMPを図るテストだ。
7年間、魔法の練習を続けてきたため平均より高いだろうな程度に思っていた。
他の生徒は10、高くても20くらいだ。ふと、急に生徒がざわつき出した。
「聖女さまだ」
「アリア様!! 」
どうやら、主人公ことアリアちゃんの番のようだ。
この学園で見たのは初めてだが、前世、ゲーム画面で見慣れていた顔だ。
ざわつきがまだ収まらない中、魔力測定の結果が出た。
30。あぁ、そういえば主人公の初期魔力こんな感じだった。
とはいえ、今までで最も高い数字にざわつきがさらに大きくなる。
「さすが聖女様ね! 」
「魔王を倒してください!! 」
歓声が最高潮に達している中、お構いなしに呼ばれる生徒がかわいそうだ。
そして私の番になった。
これがすべての元凶である。
先ほどまでの歓声はどこへやら、多くの生徒が訝しい視線を向けてくる。
「ファルラ・ドラゴイド譲ですね。緊張しないでいいですよ」
ご年配の学園長は私に対してかなり優しい口調だった。
さすがに王都学園の学園長なだけある。差別などしないらしい。
言われた手順で測定器こと結晶に手を触れる。
触れた途端、結晶が発光したと思うと測定をしていた職員が驚いた声で
「ファ、ファルラ・ドラゴイド様……魔力値99、この測定器の限界値です…」
MP99、それは初期値よりは高いが、物語中盤に入るころにはとっくに達しているであろう値だ。それが限界値とは、その程度の値すら入学時の値として想定されていなかったのだろうか……
しかし他の人は違うようだ。
「な、何かの間違えであろう。ファルラ嬢、なにか小細工をしましたかね? 」
「いえ、はっきり言ってMP…魔力値99は学生に限らなければ低い値かと思いますが…」
そう言ったのが間違えだったのか
「なにを……魔力値99に到達できる学生、いや人間などほんの一握り。それを入学時から到達していた者は学園300年の歴史今までに一人としていないのですぞ」
意外過ぎる事実。いや、確かにゲームで使えたキャラなんて聖女とかいう神に選ばれた存在だったり100年に一度の天才だったりとかよくわからない設定のキャラだった。
「やはり悪魔の子だ!! 」
「小細工するな!! 」
何も小細工をしていないし、私はしっかり人間の子なのに心にもないことを言われる。
「静粛に。小細工なら実技の授業ですぐばれることですし、今後改めて測定します」
といった感じで、私は疑われたまま入学式を終えることになった。
ちなみにその後もゲームで主要キャラにあたる生徒たちのレベル測定だったりイケメン顔だったりでひと騒ぎあったのはまた別のお話。
入学式の閉式後、寮に戻った私は今後のことを考えていた。
まず悪役令嬢として活動するうえで欠かせないのは、適度に派閥をつくることだろうか。ゲーム内でも取り巻き的な存在はいた。これに関しては私が大貴族であることと、元の私は常識ある人間なので問題ないだろう。
一番大きな問題はどうやってアリアちゃんに接触するかなのだが、これに関してはすぐに解決した。
私の部屋のドアをノックしたのがアリアちゃん本人だったからだ。
「アリア・ハイラグです。ファルラさん、少しよろしいでしょうか?」
思わぬ訪問にしばらく思考停止していた。
「ファルラさん…?」
「あ、すみません。どうぞ」
入ってきたのは紛れもなく主人公、アリアちゃんだった。
やっぱり主人公補正なのだろうか、可愛すぎる。
「えっと、主人公…じゃなくて聖女ともよばれる方がなんで私の部屋なんかに…? 」
「その…お願いがあるのですが…」
「ともに魔王を倒していただけないでしょうか? 」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます