王都学園
さて、トレーニングと言っても、何を鍛えればいいのかわからない。
シンプルに筋トレとかなのかな?
―そこまで考えて、ムキムキの貴族令嬢を想像して止めた。
ふと、自分がファルラ、つまり稀少な闇魔法を使えるキャラなのだと思い出した。
そうはいっても、使う機会もなかったので使い方を知らない。
ということで、まず魔法の使い方が書いてある本があるかもしれないと思い、書庫へと向かった。
3時間後、魔法の教本を見つけた。使い手が少ないはずの闇魔法の教本すらあった。
魔法というのは、魔力の扱い方から練習が必要で、教本によると闇魔法は特に扱いが難しい魔法であるらしい。
これは時間がかかるなぁ、と長期戦を覚悟した。時間は7年もある。地道に続ければ―
1時間後、魔法が使えた。
目の前には魔法でバラバラになった梯子が落ちている。
初級魔法とはいえ、教本には半年習得にかかると書いてある。
それが本を探すよりも短い時間で習得できるとは。
……よく考えてみれば、ゲーム世界において魔法を学び始めるのは入学後なのに、ファルラは序盤から闇魔法でのいたずらを主人公に仕掛けてきていた。
どうやら才能に恵まれているらしい。
翌日、さっそく町のはずれの森に行くことにした。
初級魔法の練習をしただけで梯子がバラバラになるのでは、いつの間にか図書室全体が吹き飛ぶとかいう洒落にならないバッドエンドもありえるため、広い場所で魔法の練習がしたかった。
もともと屋敷の中でも使用人と接触することが多くなかったので、半日程度であれば抜け出してもばれないだろう。
とはいえ、貴族のなりで子供が一人森に入っていくなんてどう見ても怪しいので、帽子で髪を隠して庭師のブーツと上着を拝借することにした。
ちなみに、RPGとはいえ根底は乙女ゲームなので、魔物はいるが種類に富んでいるわけでもなく、なんなら経験値とかもない。ということで、魔法がある程度撃てるようになってからはスライムなんかのド定番魔物を標的にして練習を重ねた。
魔法の練習を3時間ほど続けただろうか。魔法がもう撃てなくなっていた。
いわゆるMP切れだと気づいた。
初級の小さい魔法であれば連発はできるぐらいになったが、レベルの高い魔法になれば1発打つと急激に疲れてしまう。
大体12時ころだと思うが、昼食を食べていないことに気づき、急激に空腹を感じたので、急いで屋敷に戻った。
そんな日々を続けて7年、14歳になった。
珍しく父に呼ばれた。
半年に一度顔を合わせるか合わせないかくらいの関係性だったが、会っても特に親子らしい会話などなく、淡々と「明後日から王都学園に通うこと」そして「行動だけでもドラゴイド家の恥とならないように」といったことを伝えられた。
明日から学園生活が始まる、すなわち寮生活になるわけで、両親と離れ離れになるのだが、父との会話はそれで終わり、母に至っては顔すら見せなかった。
というわけで、翌日さっそく馬車で王都へ向かうことになった。
道路は舗装されていないし、馬車の乗り心地は最悪だった。
車がないのは仕方がないにしろ、魔法があるのだからもう少し乗り心地のいいようにはできないのだろうか。とも思ったが、魔法というのはそこまで便利なものでもないらしい。
悪路に揺られて丸一日。ようやく王都についた私は、学園寮に直接向かうことになった。
この学園には王国中の貴族の子供が通っていて、魔法や剣技などの戦闘実技を中心に、国の歴史などの座学も学ぶことになっている。
寮に荷物を置いた私は、学園内を見学することになった。
この学園では生徒一人に一人専属の使用人が付くらしく、彼女に案内してもらった。なお、全体を通して彼女の対応があまり良くなかったのは気のせいではないだろう。
学園内を歩いているときも、すれ違う生徒からもやたらと視線を感じた。これぐらいは悪役令嬢を目指すなら我慢しなければならない。
一番気になるのは主人公聖女ことアリアちゃんなのだが、今日は見つけることができなかった。
ゲームの世界では1年後に魔王を倒すことになっていて、私が倒されるのは意外と魔王戦の数日前、ラスボスの前哨戦的な存在なのだ。
主人公を引き立たせるというのが悪役令嬢の役割で、それを怠るつもりはないので早くアリアちゃんを見つけたい。
翌日、入学式が行われ式は何事もなく進んでいったが、その後、入学生全員の魔力測定が行われることになった。
それがすべての元凶だった。
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