第9話 風早家

大学の裏門に車が待たせてあった。

その車に乗って家に向かう間、愛梨はずっと風早司と話をしていた。




家に着くと、大きな門と、それを入ってからも長い敷地を車で玄関まで向かうのに圧倒された。本当にこんな家があるんだ。

広い玄関には、お手伝いさんが待っていた。



愛梨は時々何か話しながら風早司の隣を歩いていたけれど、わたしはずっと黙って、後ろをついて行くだけだった。


「ご両親は?」

「今日は2人ともいない」

「えーっ、じゃあ、この広い家に今日はひとり?」

「兄貴がいる。あと、家のことやってくれる人が何人か。だからひとりになることはないよ」


そんなことを話しながら前を歩いていた2人が、急に立ちどまったので、危うく愛梨にぶつかりそうになってしまった。


「兄貴にも会って」


その言葉は、わたしに向けられていた。

風早司はドアをノックをすると


「大学の友達連れてきた。挨拶くらいしてよ」


そう言って、返事も待たずにドアを開けた。

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