第4話 はじまり
あまり勉強はできる方ではなかった。むしろ苦手。
高校も途中までしか行っていない。
最初に、学校へ行こうと思った。
家に帰ってからすぐに進学する方法を調べて、高等学校卒業程度認定資格というものがあることを知った。資格が取れても、高校を中退してしまった自分は中卒にしかならないけれど、大学受験が可能になる。
すぐに受験案内を取り寄せて、出願した。
高等学校卒業程度認定試験のための勉強をしながら、同時に大学受験の勉強も始めた。
あきらめたくない。
いっぱい勉強した。今までしてこなかった分、いっぱいいっぱい勉強した。
それで高卒認定試験に合格し、地元の大学を受験する資格を得ることができた。
どの学部を受験するか悩んで、勉強をしているうちに古文が楽しくなったから、文学部をめざそうと決めた。
2度目に会えたあの日にもらった電話番号には、かけることができなかった。ただ、ずっとお守りのように大切に持っていた。
決してあきらめないために。
次の年の春、啓修大学の文学部に入学することができて、ようやく前に進むことができたと思えた。
だから、もしもう一度、あの人に会うことができたら、今度は自分から『あなたのことを教えてください』って言おうと決めていた。
でも、その頃になってわかった。
風早さんは、会いたいからって、簡単に会える人じゃない。
大学1年生が終わる頃だった。
あのニュースが飛び込んできたのは……
『風早流次期家元と称される風早恭一 白血病を公表』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます