第4話 はじまり

あまり勉強はできる方ではなかった。むしろ苦手。

高校も途中までしか行っていない。


最初に、学校へ行こうと思った。


家に帰ってからすぐに進学する方法を調べて、高等学校卒業程度認定資格というものがあることを知った。資格が取れても、高校を中退してしまった自分は中卒にしかならないけれど、大学受験が可能になる。

すぐに受験案内を取り寄せて、出願した。


高等学校卒業程度認定試験のための勉強をしながら、同時に大学受験の勉強も始めた。


あきらめたくない。


いっぱい勉強した。今までしてこなかった分、いっぱいいっぱい勉強した。

それで高卒認定試験に合格し、地元の大学を受験する資格を得ることができた。

どの学部を受験するか悩んで、勉強をしているうちに古文が楽しくなったから、文学部をめざそうと決めた。



2度目に会えたあの日にもらった電話番号には、かけることができなかった。ただ、ずっとお守りのように大切に持っていた。

決してあきらめないために。



次の年の春、啓修大学の文学部に入学することができて、ようやく前に進むことができたと思えた。


だから、もしもう一度、あの人に会うことができたら、今度は自分から『あなたのことを教えてください』って言おうと決めていた。


でも、その頃になってわかった。

風早さんは、会いたいからって、簡単に会える人じゃない。




大学1年生が終わる頃だった。

あのニュースが飛び込んできたのは……



『風早流次期家元と称される風早恭一 白血病を公表』

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