リスタート

第10話 仲間【4月】

「失礼しまーす…」

「ん?あ、もしかして1年生?」

「はい!見学に来ました!」


部室の扉から恐る恐る声を掛けられた。

あーそういや「気軽に部室に来てください」的なこと俺言っちゃったんだっけ。

でもこんなに早く来てくれるとは、やる気満々だな。


「えーっと、見学はひとり?」

「いや、私たち3人です!」

「おお、いきなり3人か。顧問の亘です、よろしく」

「吉川 こころです!」

菅野かんの 詩音しおんです」

「大山 優歌ゆうかです。よろしくお願いします」


新歓での演奏後、見学に行こうって話してたのはこの3人だったのか。

まだ決まってないが、3人も入ってくれたら成果としては充分じゃないか。

個人練習中の他の部員も集めてミーティングを開いた。


「全員揃ったな。よし、ミーティングを始める」

「よろしくお願いします!」

「今日、1年生3人が見学に来てくれている。左から吉川、菅野、大山だ」

「おお〜よろしくね!来てくれてありがとう!」


拍手が起こった。部長の野田は早速張り切ってるな。

他のみんなも相当嬉しそうだ。

見学は仮入部を兼ねているから楽器を持たせてもOKなはずだ。

後で楽器経験も聞いてみるとするか。


「とりあえず1週間、3人には仮入部をしてもらう。その間、上級生は1年生が困らないよう力を貸してやってくれ」

「はい!!」

「1年生だけ残って、上級生は練習に戻っていいぞ」


浮かれモードな上級生たちは名残惜しそうに練習に戻っていく。

浮かれるのもいいが、練習をおろそかにしてはいけない。

この子たちが入ってくれるとしても人数は足りてないんだから、個々の実力を磨かないとな。


1年生はなんだかずっとそわそわしている。

まぁ無理もないか。顧問が目つきの悪い俺だしな。


「じゃあ早速だが、ピアノでも何でもいい。音楽の経験者は?」

「はい」

「私もです」


手を挙げたのは、若干伏し目がちな菅野と真面目そうな大山。

吉川は経験なしか…一番やる気に満ちた顔をしているが。


「あの!楽器の経験者じゃなくても入部できますか!?」

「もちろん。やる気さえあればいくらでも上手くなる」

「よかった…!ありがとうございます!」


やっぱり吉川は他の2人より元気がありすぎる。

良いことだけど2人ちょっと引いてるぞ。


「菅野は楽器、何をやったことがある?」

「ピアノを7年間やっていました」

「おぉ、すごいな。他に興味のある楽器は?」

「フルート…です。昔聴いたとき、すごいキレイな音だなぁって」


フルートか、今の上級生たちは金管が多かったからちょうどいいな。

繊細な音色でさらに良いバランスになる。


「先輩たちの練習を見学したら、フルート吹いてみるか?俺が吹き方教えるから」

「え、いいんですか…?」

「実際吹いてみてキレイな音聴いてみたいだろ?」


菅野は照れくさそうに頷いた。どうやら照れ屋みたいだ。

俺が小学生のとき、色んな楽器を触っていて先生にフルートを軽く教わったことがあった。

そんな浅い知識だが、吹けるようになるかは菅野次第だな。



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