第25話 コラボ第二弾 

 あの陽キャどもに後悔と絶望を与える。

 そのために今やるべきこと。

 それは……白鶴ちゃんのチャンネルを伸ばすことだ。


「またコラボしよっか」

「「え!?」」


 二人とも先日のニンニクコラボですっかりとコラボの楽しさに目覚めてくれたようだ。コラボという言葉だけで目を見開いて、体をカタカタ震わせている。

 よかった。

 それだけ楽しみにしてくれるんだったら俺も企画を考えた甲斐があるというものだ。


「ダンジョンで希望者と戦っていくという企画なんだけど」


 凸待ち。他の配信者たちが来てくれるの待つスタイルの配信だ。

 

「どうして突然……?」

「コラボ、ダンジョン、吸血種、にんにく……。あ、あああ、いやあああああ!」


 野呂さんは滅茶苦茶警戒してる。必死にニンニクの臭いがしないか嗅いで確かめようとしている姿がすごく面白い。

 白鶴ちゃんはもはやトラウマになってるため、パニックだ。


「いや、例の動画が流れてみんな二人の力のことが気になってるみたいだし。ここで有名配信者と一発大きいコラボをドーンとやろうと思って。今がチャンスだからね」

「それはそう、だけど……」


 今、バズって注目されている時が大事だ。

 もっと目立って登録者数を増やしてもらわないと。

 そのために手っ取り早いのが有名配信者とのコラボだ。


「いろんな人がいたから、僕がいいと思った人の候補を上げるよ。あ、ちなみににんにくの人はいないから安心してね」


 まだ叫んでいた白鶴ちゃんの悲鳴がぴたりと止んだ。

 

「なら安心ですわね。この間は美都が勝手に選んだコラボ相手だったからあんなことになったんですもの」

「だって、初めてコラボに誘ってもらえてうれしかった、から」


 それで前回のような悲劇が起こったのか。

 あんな化け物が出てきたのは想定外だったけど、もう会うこともないだろう。

 化け物というのは高位の吸血鬼のことであり、にんにくを進めてきたダンジョン攻略部の皆様とは実は懇意にしている。

 またコラボをしようと約束も取り付けたのは秘密だ。


「さて今回のコラボ相手だけど、候補は二人いるんだ。一人目は酒クズさん。酒、女、ギャンブルが大好きな借金系配信者。この間なんかガチャ動画で廃課金して、挙句の果てには町金からお金を借りてて大爆笑だったよ」


 あれ? 

 なんでだろう。

 二人の顔から生気が失せていってるんだけど。


「なんですの、そのやばい方……」

「ゲームで、借金……?」

「いやいや、今世間から注目されてるんだから。むしろここは攻めないと。それに女の人だから安心だよ」

「女性だからってやばいことに変わりありませんわ!」

「こ、怖い……。他にはいないの?」


 仕方ないな。

 じゃあ次。


「じゃあ、安全な人にするよ。二人目は30歳童貞さんという人だね」

「ど、ドウテイ……? なんですの?」

「一度も女性経験がない人のことだよ!」

「あ、安全……?」

「うん。だって一人でもやったことがない聖人だからね。あ、ちなみに趣味はエ〇漫画や動画を鑑賞すること。鑑賞したうえで耐えてるんだからすごいよね」

「す、すごいとは思うけど……」

「その人も危なくありません? ある日突然欲求が抑えられなくなるということもあると思いますの」


 これもダメか。

 そうか! 閃いた!


「わかった。二人の希望は安全なコラボだね」

「う、ん」

「わたくしも楽しく安全にコラボしたいですわ」

「そういうことなら任せて。二人には安心してコラボができるように準備は整えておくから」


 ※※※※



 コラボ当日。

 ダンジョン内にて。


「どうして? なんで?」

「ありえませんわ……。どうして酒クズ様と30歳童貞様が二人ともいるんですの!?」

「いやだって。二人とも呼んだらけん制しあって安全かなって。それにまともな人より頭おかしい人呼んだ方が面白そうじゃない? あ、言っちゃった」

「今、頭おかしいって認め、た! 相手するの私たち、なんだよ!」

「まぁまぁ、二人とも白鶴ちゃんチャンネルのメンバーだから。ファンだよ。それに今回の企画はダンジョンでの戦闘だから。ダイジョウブ、ダイジョウブ」


 やべ、本音出ちゃった。

 正直、白鶴ちゃんが頭おかしい奴らと関わって右往左往している姿が見たかったなんて死んでもいえない。

 それに嘘は言ってないし。

 こうして地獄、じゃなくてとても素晴らしいコラボが始まる。

 

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