第5話 復讐戦線結成ね、でわたくしの告白への返事は?
「だったら、提案なんだけど。私と一緒に復讐しない?」
俺をいじめていた陽キャグループの一員野呂さん。
そんな野呂さんは勇気を出していじめをやめるように言った結果グループを追い出されてしまった。
そんな彼女を尊敬して、友達になったまではいい。
それがいきなり復讐の提案?
ただでさえ、推しの白鶴ちゃんや野呂さんのことで頭がいっぱいいっぱいなのにわけがわからなくなってきた。
「復讐? たしかにこのままあいつらに何も報いがないのは納得いかないよ。けど僕としてはいじめが止まるのなら余計な波風は立てたくないな……」
報いを受けさせる必要はないというのは本音だ。
どうせそんなことをしなくても、普段の行いが悪い人間は遅かれ早かれ破滅する。それはもう決まっていることだから。
「わたくしは賛成です。このままやられっぱなしはわたくしの気がおさまりませんわ。それに本当にいじめがなくなるなんて保障はないのですから。反撃する準備くらい、してもよろしいかと」
一理ある。少し考え直してもいいかもしれない。
「でも復讐って?」
「マウントを取ってプライドをへし折る!」
意味がわからない。あまり大掛かりなことはしたくないんだけれど。
「マウントって?」
「正義と姫と剛士、三人に共通するのは強烈な承認欲求があること、なの」
それはなんとなくわかる。ことあるごとに自分たちのチャンネルの登録者数を自慢していたからだ。
「それで?」
「だったら私たちが3人のチャンネルより多くの登録者数を獲得するの! それで言ってやるの。『うわっ…チャンネル登録者数、少なすぎ…? あれだけ私たちにマウント取ってたのに。ぷーくすくす』って!」
野呂さん、最初は俺と話しててどもっていたのに滅茶苦茶流暢に話してる。
そのことがうれしくてつい笑ってしまう。
「ぷーくすくすって何それ? ずいぶんかわいい煽り方だね」
やっと目を合わして話してくれていたのに、また目線を外されてしまった。
でも今回は気まずさからじゃなくて恥ずかしさからだ。
茶髪のショートカットから見えている耳が真っ赤だからわかりやすい。
それに長い前髪で表情がわかりにくかったけど、照れた野呂さんの表情はとてもかわいいと思った。
「それに! 私には教えてくれてなかったけど、3人は裏で何か危険なことをしてる! それを白日の下にさらしてやるの!」
動画の手伝い、というかパシリをやっていたから内情は少しわかる。
他人の炎上ネタに乗ったりと危ない香りがすることを陽キャたちは始めていた。
「でも、いいの? 追い出されたとはいえ、友達だったんでしょ?」
野呂さんは少し考え込んだ。けどその瞳には強い決意の色が宿っていた。
「いい……! 私を追い出したこと後悔させてやるのっ」
「いいんだね? 復讐するってなら容赦はしない。本当にいいの?」
動き出したら、もう止まらない。止められない。
「……うん。いい。私はもう逃げない。目を逸らすのはやめるって決めたから」
いくら
罪悪感がちくりと胸を刺した。
「決まり、ですわね。わたくしもそれでいいと思います」
白鶴ちゃんも満足げに頷いている。
二人の仲が険悪になりかけた時はどうなるかと思ったが一安心だ。
「うん。これで話はまとまったね」
「これから……よろしく」
顔を真っ赤にして、照れながらではあるけど野呂さんが手を差し出してきた。
俺はその手を取って握手する。
こんな関係も悪くない。まさか俺をいじめてた陽キャグループの一員とこんなことになるなんて。やっぱり人生何が起こるかわからない。思っていた通りにはなかなか進まないものだな。
「復讐戦線結成ですわ。で、わたくしの告白への返事は?」
あ。
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