第2話 推しが画面の中から出てきて告白してきた件について
俺には推しがいる。
推しというのは生活を豊かにしてれる。
俺の推しはまだ登録者数が1000人もいっていない。
だからこそ応援のしがいがある。
正直、彼女の存在がなければ学校でのいじめも耐えられなかった。
俺を救ってくれた存在といっても過言ではない。
『みんな~! 今日の配信も来てくれてありがとうございますわ』
和装美少女のVirtual My Tuberだ。略してVtuber。
中の人が美少女のイラストを動かして配信している。
「今日も配信楽しかったです。お疲れさまでした、と」
パソコンに入力する。
親は今、海外出張中。妹もいないし、家の中には家族はいない。だから推し視聴中興奮して声を出してもいいというのが最高の環境だ。
『ありがとうございます。わたくしも楽しかったですわ』
やった! 返事してくれた!
たぶん俺に対してじゃない。多くのリスナーが俺と同じようなことを書いている。それでもいい。推しが自分の言葉に答えてくれる。そんなことがたまらなくうれしいんだ。
「ん? フリーズか?」
パソコンが一瞬固まる。
でもすぐに動き始める。
「よかった。壊れたかと思った」
画面のコメント入力枠にちゃんと文字を打ち込めた。
「あれ?」
動画配信の画面構成は配信画面とコメント欄の二つに分かれている。
コメント欄にはさっきいろんな人のコメントがあったのに空欄となっている。
それに配信はもう終了したはず。
なのに白鶴ちゃんがまだ映ってる。
『ねぇ、わたくしの声届いていますか?』
これは噂の配信切り忘れというやつだろうか。
やばい。
早く知らせないと。
「配信終わってないですよ、と」
コメントを投稿した。
だが、まだ配信は終わらない。
『わたくし、あなたに伝えたいことがありますの。ずっとずっとこの時を待っていました。もうこの気持ちを、胸の高鳴りを抑えることはできません!』
まずいまずいますい!
この空気感、まるで告白前のようだ。
しかも、白鶴ちゃんの中の人気づいてない!
たしかに推しの中の人に好きな人がいることはショックだ。
だけど中の人も一人の女性だ。良識のあるファンとして、ここは暖かく歓迎しなければ。歓迎……。
「うう……」
泣いてなんかいない! 断じて違う!
泣く暇があるなら、wisperとかのSNSを使って知らせないと。
『わたくし、美々白鶴は
うおおおおおお!
推しが見知らぬどこぞの馬の骨に取られたよー!
「ちくしょおおおおお! ん? はい?」
今聞き間違えじゃなかったら、俺の名前を言っていたか?
そんなまさかぁ。
『あの。わたくしの一世一代の告白、ちゃんと聞いてくださいましたか? 白様』
まさか。まさかとは思うが。一応念のためだ。これで間違えてたらただの自意識過剰厄介クレイジーオタクだ。
「ちゃんと聞いてましたよ」
コメント欄に入力した。
『よかったですわ。このままじゃ不便ですし、今からそちらに参りますね』
「へ?」
画面の中からV tuber 美々白鶴が出てきてしまった。
推しが今俺の部屋に、目の前にいる。
そのあまりの衝撃に俺は開いた口がふさがらない。
「心の底から愛しております。これから末永くよろしくお願いいたしますわ。」
推しが俺の手を握って、告白してきた。
その衝撃に、俺の脳みそは耐えきれなかったらしい。
目の前が真っ暗になった。
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