第11話 全員リレー
体育館の中でリレーをする時に、周回するよりも往復型のリレーをすることが多い。
2年生も紅白4チームに分かれて、全員リレーだ。まず、子どもたちを体育館中央に4列に並べさせる。先頭の子どもには小さなリングをもたせている。そして、ホイッスルとともにスタート。体育館の壁にタッチをして、中央にもどってくるが、ここでバトンは渡さない。そのままステージまで走り、ステージにタッチしてまたまた中央にもどってくる。そしてバトンタッチだ。要するに体育館を1往復することになる。これだとバトンリレーでのトラブルが少ない。フライングもない。とても合理的なリレーなのだが・・・。
珠江ちゃんが泣き始めた。運動が苦手な子どもなので、他の子どもと同じ距離を走らせると、およそ1人分の差ができてしまうのである。チームの友だちに迷惑をかけてしまうので、走る前から泣き始めてしまったのだ。豪介は困ってしまった。女の子の涙にはめっぽう弱い。支援員のSさんに任せて、スタートした。珠江ちゃんのチームは1人が2回走ることになった。それでも最下位になってしまった。
そこで、豪介が口を開く。
「先生は、みんないっしょにやりたい。そこで、最下位のチームにはハンディをつけたいんだが、いいかな」
と言うと、いろんなところでハンディをつけるのを子どもたちは知っているので
「いいよ」
という返事がくる。やさしい子どもたちである。そこで、珠江ちゃんを呼び、
「珠江ちゃんはスタートでステージに向かって走ってください。向こうの壁にはタッチしなくていいです。つまり、みんなの半分でOKです。これならみんなと差がつかないよね。がんばれるかな?」
と聞くと、珠江ちゃんはうなずく。そこで、第2戦の始まりである。1位だったチームは10m下げ、2位のチームは5m下げた。これで対等の力になるはずだった。が、やはり1位のチームが速かった。2位も同じ。速いチームはハンディつきでも速いのである。ただ、3位に珠江ちゃんのチームが入った。それなりに喜んでいた。
今日も、どなるだけで走ることなく終わった。
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