第6話 ニュースポーツ体験

 今日は社会教育課の協力を得て、ニュースポーツ体験会を開催することになった。2年生の学年行事なので、親子いっしょの体育授業である。子どもたちは、カードをもっていて、4種目をクリアすると、学年委員長さんから認定状がもらえることになっている。それと参加賞としてノートがもらえる。

 社会教育課が用意したのは、スカットボールとモルックである。スカットボールはお父さんたちが室内でよくやるパターゴルフの発展版で、ホールが6つある。それに点数がついており、より高得点をとった人が勝ちというニュースポーツである。ボールはゲートボールを使い、スティックもゲートボールのものを使う。今回は子ども用のスティックを用意してきてくれた。

 モルックは、長さ10cmほどの円柱状の木を3~4m先の12本の木片に投げつけるニュースポーツである。木片には1~12の数が書いてあり、1本だけ倒した時はその数が点数になり、2本以上倒した場合は倒した本数が点数になる。それで50点に近い人(チーム)が勝ちとなる。50点を越すと、また1からやりなおしである。(55点だと5点にしかならない)

 そこで4時間目に社会教育課リードの元に2種目の体験会を行った。これは子どもたちだけである。スカットボールは勢いさえあれば、どこかのホールに入る。子どもたちはすぐに慣れて喜んでやっている。モルックはコツがいる。中には1本も倒せない子どももいた。亮くんも最初はうまくいかなかった。だが慣れてきて、倒せるようになったが、50点にするにはどの子も大変だった。一番大変だったのは、倒れたモルックを起こすことである。支援員のSさんとKさんにお願いしていたが、体をかがめ、モルックを立てるのが結構腰にくるようだった。それに、点数を数えるのもシンドそうだった。高齢者のぼけ防止には、いいニュースポーツかもしれない。

 子どもたちは、初めてやるニュースポーツを喜んでやっている。どちらも慣れれば、そんなに難しくはない。社会教育課のスタッフの盛り上げ方もなかなかである。

 さて、豪介だが5時間目の準備にいそしんでいた。ひとつ悩みがあった。時間の配分である。親子あわせると、40人ほどの人が参加することになる。となると45分の授業なので、一人あたりの1種目の時間は1分間である。すごく時間が短い。通常のルールでは、間に合わない。そこで、昼食時に社会教育課のスタッフと相談して、スカットボールはチャンスが2回。点数にはこだわらず、ホールに入ったら合格ということにした。モルックもチャンスが2回。6点以上とったら合格ということにした。12本のうち、半分をたおすか、6点以上のモルックをねらい打ちすればいい。このねらい打ちは結構難しいが、6本たおすのはそんなに難しいことではない。だが、中には1本も倒せないノーコンの子どももいた。

 豪介が用意したのは2種目である。一つ目はフリスビーターゲットである。学校にあるやわらかいフリスビーを使って、段ボールの箱めがけて投げ込むのである。その段ボールの箱には鬼の顔が描かれている。豪介の手作りである。場所はステージ上で、これは支援員のSさんに仕切りを頼んだ。

 2つ目は、ペタンクである。豪介はベルギー赴任時代にこのスポーツに親しんでいる。本来は、外で行うものであるが、今回はマットをしいて行うことにした。本来ならばチームで行い、目標のボールに近いところにボールを置いた方が勝ちである。通常ならば10分ぐらいかかってしまうが、今回は子ども(親)が目標の白ボールを投げて、次に豪介が赤ボールを投げる。次に子ども(親)が青ボールを投げ、赤ボールより近ければ子ども(親)の勝ちである。1投目がうまくいかなくても、2投目のチャンスがある。それでも赤より近くなければ、豪介の勝ちである。

 豪介は、勝つ気はないので、白ボールから少し離れたところに赤ボールを置くようにした。子どもたちは、1投目もしくは2投目で赤より近くに置くことができるので豪介から合格のスタンプをもらっていた。時々、豪介の赤ボールが白ボールぴったりにくっついてしまう。豪介にすれば失投である。その時は1投目で赤ボールをはじきとばさなければならない。それは子どもたちには難易度が高かった。中には、2回目にチャレンジする子どももやってきた。

 授業の半分が過ぎたあたりで、予想外のことが起きていた。4種目をクリアする子が続出しているのだ。豪介はターゲットフリスビーがそんなに簡単とは思えなかった。なにせ、豪介が10回やっても1回しか入らなかったからだ。後で支援員のSさんに聞くと、

「子どもたちは、2投目でだいたい入れてましたよ」

 という。ふだんから遊びでフリスビーを使っている子どもが多いからであろう。子どもたちに脱帽である。

 親たちは最初、遠巻きに見ているだけだった。子どもたちの様子を見るだけでもいいと思っているようだし、親向けのカードはない。あくまでの授業参観なので、他のクラスを見にいく親もいる。だが、後半になって、ニュースポーツに参加する親がでてきた。見ているだけではつまらなくなったのだろう。親に人気なのはスカットボールである。パターゴルフよりも簡単で合格がもらいやすい。2回やれば、まず入る。豪介とペタンクの勝負にきた親もいた。豪介はこの学校で5年間講師をしているので、顔なじみの親も多い。兄弟関係を教えたことがあるし、家庭訪問をした親もいるのである。そういう親とは真剣勝負である。豪介はできる限り、白玉に近づけた。豪介の赤玉をはじきとばす親もいて、終始和やかに進んだ。妊娠している担任も喜んでいる。もうじき産休に入るので、子どもたちとのいい思い出ができたと思っているようだ。

 子どもたちは皆、認定状をもらうことができ、にこやかだった。今日の授業はしゃべり過ぎたが、またもや走らずに終わった。

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