第4話 ぶつかっちゃダメよ

 3年生の担任から、

「授業の導入で、走ることをさせてください」

 と言われたので、ただ走るだけではつまらないので、

「男子は校庭を時計まわり、女子はいつものとおり反時計まわりで走ってください。

ただし、途中でぶつかっちゃダメ」

 と言って走らせてみた。子どもたちは勇んで走っていく。案の定、途中でぶつかった子どもがいた。少しとろい男の子が女子とぶつかったのである。この女子はふだんからそそっかしい。別にけがをしたわけではないが、子どもたちがもどってきてから豪介は子どもたちに問うた。

「どうして、ぶつかっちゃだめなのかな?」

 すると、

「けがをするから!」

 と言う子がでてきた。当然である。

「たしかにそうだけど、それだけじゃない」

 ここで、子どもたちが悩む。カンのいい子が口を開く。

「ぶつからないように走れば、クルマとか自転車をよけられるようになるんじゃない?」

「そうだよ! よく気が付いたね。この世の中には危険がいっぱいだ。その危険を避けるための練習だよ。ボーッとしていたら、この世は生きていけないぞ」

「先生、TVのセリフみたいなこと言ってる」

 と子どもたちは笑って聞いていた。


 翌日の体育は、雨が降ったので体育館で行うことになった。

「今日もぶつかっちゃダメよをやるぞ。男子は左の壁からスタートして右の壁にタッチして、左の壁にもどる。女子は右の壁からスタートして、左の壁にタッチして右の壁にもどる。途中でぶつかったらアウト。最初からやり直し。それに、今日は真ん中に鬼がいます」

 と言うと、子どもたちから「エー!」と声があがる。

「鬼につかまると、やり直しだからね」

 と言って、豪介が中央に立つ。スタートして子どもたちが走り出す。多くは、体育館中央を避けるが、中にはボーッとしている子が豪介の近くにやってくる。そこで、豪介が近寄って鬼の真似をする。すると、「キャー!」と言って逃げていく。豪介は笑いが止まらなかった。わざと豪介に近寄ってくる子もいた。豪介が走らないのを知っているので、からかいにきたのである。体育館は横に広いのでだれもぶつからなかった。

 次にやったのが、ボールよけゲームである。俗にいう「インベーダーゲーム」である。半数の子どもたちにテニスボールをもたせて、2つのラインに並ばせる。その中央を半数の子どもたちが走り抜けるのである。投げる子どもたちはラインを越えなければ何回でも投げることができる。ワイワイやりながら子どもたちは楽しんでいた。あたってもいたくないし、ペナルティもないので、

「先生、もう1回やろう!」

 というリクエストがでて、結局3回もやってしまった。

 今回は横動きはあったが、走ることなく終わった。

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