第24話 復活の原因を突き止めろ
再びゴブリンダンジョンを潰した。
今度は監視カメラでの記録をちゃんと行う。
前回はただの洞窟に戻ったからと録画してなかったんだよね。
監視カメラの回収は面倒だったのでやらなかったんだけど今回は結果的にそれが幸いした。
何気なしにリアルタイムの映像を見たらダンジョンが復活してたから焦った焦った。
サバイバルゲームのゾンビ行為じゃあるまいし復活するとか反則もいいところだろう。
犯人にはきっちり落とし前をつけてもらわないとね。
単なる自然現象という線が可能性として微少レベル程度に残ってはいるけれど。
ただ、俺の直感は0パーセントだと言っている。
何者かまではわからないけど黒幕がいる気がしてならないんだよね。
その悪党の面をぜひとも拝んでやろうというのが今回の目的だ。
監視カメラからタブレットに送られてくる映像に変化があると軽いアラートが鳴るようにしたので休みなく見続ける必要はない。
誰が潰したダンジョンを元に戻そうとするのか気になるところだけど、ずっと監視するのは10才児には負担が大きいからね。
こういうのは身体強化では吸収しきれないところだ。
いざという時に踏ん張れないと困るので楽ができるところは無理をしない。
という訳でさっさと戻って休んでおく。
どんな敵が釣れるのか気になるところだけど果報は寝て待てとも言うからね。
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □
変化があったのはダンジョンを潰して数時間ほどたった頃合いだ。
仮眠を取っていたけど、タブレットがピーピーと警報を鳴らしてくれるので飛び起きましたよ。
眠気も感じないしボンヤリもしていない。
それでもタブレットに移る光景は受け入れがたいものだった。
「どういうことだよ!?」
誰かがダンジョンを再生するために現れるのだと思っていたけど、そんなことはなかったのだ。
ダンジョンはあたかも生きているかのように自動的に復活した。
いや、死者が蘇生するようなものだから復活前から生きていると評するのはおかしいか。
それにどこか不自然だったんだよな。
動画を逆再生した時の感じに似ているかもしれない。
そこに謎を解く鍵がありそうだ。
ただ、映像を見ているだけでは答えが導き出せそうにない。
もう少しヒントがほしいところだ。
という訳で現地に飛んで再びダンジョンを潰す。
何度も繰り返せば別の変化があるかもしれない。
例えば地脈からの魔力の流れを再接続するための術を起動する仕掛けに過負荷がかかってボロを出すとか。
いくらなんでもそれは都合が良すぎるか。
とはいえ、ゴブリンあふれさせてしまう訳にもいかないのでダンジョンは潰す。
対処療法ではあるが調査を続行するための時間は稼げるだろう。
それで大本を発見できなければ地脈を大幅に動かすくらいのことはしないと、どうにもならないだろう。
力業すぎるが他に方法を思いつかない。
これはできれば使いたくない方法なんだけどな。
無数に歩んできた人生のいずれでも経験したことがない上に規模が桁違いだからね。
やろうと思えばできるはずという根拠の無い自信はあるけれど結果についてはまるで想像がつかない。
自分はともかく周囲に悪影響が及ぶ恐れだってあるはずだ。
巨大地震が起きるとか。
広範囲で生態系が崩れてしまうとか。
それこそ魔物が大量発生してスタンピードが発生してしまうことだって無いとは言い切れない。
そういう意味ではこのゴブリンダンジョンもそういう事態を引き起こしかねないものと考えられる。
今までそうならなかったのはゴブリンの増えるペースが遅かったからだ。
ダンジョンが成立した直後は一定数のゴブリンが配置されるので、初期値はそこそこある。
だが、そこから増殖していくスピードはゆるいためスタンピードには至りにくい。
これを仕組んだ何者かはゴブリンを利用しようとはしているようだがスタンピードは起こしたくないのかもしれない。
だとすると外部ではなく領内の人間ということになるだろうか。
目的がハッキリしないと、そうだとは断言できないものの可能性は高そうだ。
ただ、そう考える一方で果たしてそうだろうかと強く疑問にも思っている。
先代の豊富な知識を持ってしても人工的にダンジョンを作り出す方法が一切わからない。
果たして人間に可能なのだろうかと思ってしまう。
案外、悪魔とかが人間に入れ知恵していたりしてな。
自分の思いつきに一瞬ドキッとさせられた。
まさかと思いたいが、悪い話ほど現実に起きたりするものなんだよなぁ。
という訳で邪悪なものを感知するイービルディテクションの魔法を使ってみた。
反応はない。
とりあえずダンジョンの周辺に待機している訳ではなさそうだ。
だからといって安心はできない。
誰かに入れ知恵しているだけなら別の場所に潜んでいることだって考えられる。
例えばオルランの執務室とか。
あの小太り長男なら魔法使いとして大成するために悪魔を召喚するくらいはしてもおかしくないだろう。
ミューラー伯爵家の歴代当主と比較すれば凡庸な部類に入ると父アルブレヒトに評されていたからなぁ。
総魔力量が少ないから技術を磨けと言われていたはずだ。
プライドだけは高い野郎は凡庸という評価ばかり気にして奮起を求めたアドバイスは耳に届いていなかったみたいだけど。
評価の低さに耐えられなかったオルランが、それを覆すために悪魔召喚に手を出すというのは考えられない話ではない。
むしろ納得してしまうくらいだ。
地道な努力を嫌う男だからね。
ある程度の結果が見込めるなら相応に力を尽くしもするんだけど。
でなきゃ父も領主代行に任じたりはしなかっただろう。
一方で報われない可能性が高かったり見通しが立てられないようなことには、やる気を失ってしまうのがオルランという男の本性だ。
ダイエットに何度も失敗しているのが典型例じゃなかろうか。
背の低さを理由にして早々に剣術を諦めたという話もある。
そんな地道さを嫌う奴が悪魔の手を借りて何をしようというのか。
おそらく魔力の増量だ。
魔力が豊富にあれば強力な魔法も使い放題と考えるだろうから。
努力を惜しんだ結果が今の状態だということに気付けていないあたり浅はかと言わざるを得ない。
それを暗に指摘しつつ発破をかけた父の言葉を無視するような男だから然もありなんというもの。
問題はどうやって魔力の増量をするかだが、悪魔の入れ知恵があったとするなら真っ当な方法ではあるまい。
ゴブリンダンジョンを用意したのもそれに関連するのだろうか。
パッと思い浮かぶのは生け贄だ。
人間を生け贄にするのは足がついた時に糾弾される恐れがある。
だが、それがゴブリンであるなら何らかの叱責を受けることはあっても後嗣としての地位は失うことはあるまい。
あれはそういうリスク管理ができる男だ。
生け贄からどうやって魔力を得るのかは不明だが、そこを知っても意味はない。
奴と同じ真似をするつもりはないからね。
それにその必要性をまったく感じない。
どういう訳かシドは膨大な魔力を持っている。
先代はそれを使うことができなかったが俺は享受していた。
トレード転生してから今日まで派手に魔法を使ってきたが底をついた覚えが一度もないほどだ。
故にオルランが魔力を増量できたとしても脅威だとは思わない。
まあ、油断は禁物だから目をつけられないよう制御して抑え込んではいる。
それで奴の迫害が止まるとは思わないけどね。
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