第4話

今日はやけに身体が重い。病院に行くだけでも疲弊するというのに、あんな目に遭ったから尚更だ。


「流石に疲れた……」

 

 結局彼女は誰だったのだろうか。受け取った、というよりも、半ば押し付けられたマジックナイフの刃を手のひらに当てながら、ベッドの上で物思いに耽る。


「私が殺す、って。なんかの漫画に出てくるライバルキャラかよ」


 どうやら俺は彼女に殺されるらしい。そういえば彼女が言っていた。生きている顔をしていない、と。初対面で他人の何がわかるんだろうか。いや、それでも俺が彼女の言葉を否定できなかったのは、それが事実だと自覚しているからだ。もし彼女が俺の命を奪ってくれるのなら、それは案外悪くない話なのかもしれない。


「さっさと寝るか」


 明日は、というより明日も平日だ。学校に行かなくてはならない。既に重い瞼を閉じると、今日の出来事が鮮明に思い起こされる。よくよく考えれば向こうは俺のことを知っていてもおかしくはない。制服も同じだったわけだし。ぐるぐると思考が巡るが、それを塗り潰すほどの睡魔に身を襲われる。


「頭が重い……」

 

 どちらにせよ、彼女が何だったのかなどと考えたところで今は無駄なことだ。暗闇の中、次第に意識が微睡んでいく。今ばかりは思考を切り離し、意識の底へと沈むことにした。

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