36.vsメルリル④ 流氷の天使

「先生!!!! 危ない!!!!」


 麻衣美のドームの外で一条先生に危機が訪れる。殴られた事で地面に倒れていたメルリルだが立ち上がり一条先生に向かって攻撃をしようとしていた。


「ほう。自力で保健室に行けると」


「先生、そんな事言ってる場合じゃないから!!」


「ならやっぱり一人じゃ無理ということか?」


「そうじゃないってぇーー!!!」


 ドームの中では何人かの生徒が麻衣美に防御結界を解く様に言うがそれを京香が止める。麻衣美の能力スキルは既にハルトの攻撃によって大幅に体力や耐久が消耗されている。もしここで解除してしまえば次に危機が訪れた時生徒を守ることができない。


 しかしそれでも生徒は一条先生を助けないとと主張する。それを聞いていた一条先生がドーム内にいる生徒に言葉をかけた。


「問題児を手懐けるのはなれている。だから気にするな」


「私は問題児じゃない。あなたこそが問題児」


「言ってくれるな」


「消えて」


 メルリルが一条先生に対して指をさすと突如として現れた氷の塊が一斉に飛んでいく。一条先生はなんなくと氷の塊を避けメルリルに近づいていく。そして目の前まで来た時一条先生はメルリルに向かって愛ある拳をぶつけようとした。だがメルリルの氷が一条先生の拳に突き刺さり途中で止まってしまう。


「一条先生!!」


「暴力的な生徒もまた私の大事な生徒。なら私がしっかり矯正してやろう!!」


 一条先生は突き刺さる氷を無視してメルリルに拳をぶつける。氷は深く拳に突き刺さったあと粉砕した。そしてメルリルの顔面に一条先生の愛ある拳が勢いよくぶつかった。


「…………」


「どうしたんだ。さっきまでの威勢は!!」


「……もういい」


「!!?」


 殴られ少し飛ばされたメルリルは体勢を整え直すと翼は動かし始める。そして少し宙に浮いた状態でとてつもない速さで一条先生に接近していく。それと同時にメルリルは飛行しながら手を上に挙げ大きな氷を生成する。


「先生ッ!!!」


 バゴーンッッ!!!!!


 大きな音と共に一条先生は吹き飛ばされ何度も地面にぶつかっては転がっていった。メルリルは翼を徐々にゆっくりにさせ右足から地面に降りた。飛ばされた一条先生は片膝を地面につけながら息を荒げていた。


「この手こずり具合、久しぶりだ。はぁ、私ももっとしっかりしないとな」


 そして一条先生は立ち上がる。


「悪いが生徒の前ではカッコつけさせてもらうよ」


 メルリルに向かって走り出した一条先生は能力スキル【フリーハンド】を発動する。すると手には異様に刃が長い剣が現れそれを華麗に回す。その度に鋭い空を斬る音が何度も鳴っていた。メルリルは向かってくる一条先生の対して再び氷の塊をいくつも周りに生成しそれらを放つ。


 一条先生はその氷の塊は持っている剣でどんどんと斬り裂いていく。メルリルは焦っているのか徐々に氷の塊の数も増えていくがそれに合わせて一個あたりの完成度が下がっていっていた。それのおかげで一条先生は簡単に氷の塊を破壊することができさらに距離を詰めていく。


「もらった!!!!」


 一条先生は間合にメルリルを捉えると剣先を地面に触れるか触れないかというギリギリを通らせそのまま上に振り上げる。流石にこれはメルリルに攻撃を避けられてしまったが着ていた白色のワンピースは多少破けていた。そして一条先生はメルリルが回避で崩した体勢を整えられる前にさらに剣を振る。メルリルは翼を羽ばたかせ一条先生を飛ばそうとするが根性で耐える。


「…………」


 今度の一条先生の攻撃はメルリルの腕にかすり少しだけ血を流した。一条先生はこれでもかというほどメルリルにどんどんと詰めていく。あまりの行動の速さにメルリルは成すすべ無しといった状態だった。だがメルリルがそんな所で諦めるはずもなく一条先生の背後に氷の塊を生成する。しかしこれに一条先生は気づくことはなくメルリルへの攻撃を続ける。


「先生!!後ろ!!」


 何人かの生徒の声で一条先生はようやく後ろから来ている氷の塊の存在に気付き急いで振り向いてそれを破壊しようとするが攻撃をされなくなったメルリルは一条先生に対して翼を羽ばたかせる。飛ばされた時に体勢を崩した一条先生の腕に氷の塊がいくつか突き刺さる。そしてその後また地面に転がった。


「またやられたか……」


 飛ばされたもののなんとか体勢を立て直した一条先生は自身の両腕に突き刺さった氷の塊を一個一個抜き取っていく。氷には血がべっとりとついており抜く度に痛々しさが増していった。


「次で決めるぞ」


 剣を構えた一条先生だがその瞬間ふらつき地面に座り込んだ。


「一体これは……。血を出しすぎたのか?」


 一条先生はよく自身の体を見渡す。既に一条先生の体はメルリルの無数の氷の塊の攻撃を受けており至るところに切り傷があった。ひとつから出る血の量は危険という程ではなかったが傷口の数が多かったためにより出てしまっていたのだ。腕に深く刺さってしまった氷がさらに血を失う原因となった。


「……くそ校長が。もっと寝させてくれれば」


 その時メルリルの後ろからハルトの声が聞こえてきた。


「ラムネ、行け!! おまえがとどめを刺すんだ!!」


「まっかせてください!!!」


 一条先生との戦いに集中していたメルリルは既に真後ろまで来ていたラムネ達の存在に気づくことができなかった。急いで振り向き攻撃を防ごうとしたメルリルだがラムネは跳躍し剣を振り下ろしてきていた。


「これで終わりですぅ〜!!!!!!」


 そしてその瞬間、


 ドッカーンッ!!


 と大きな音が鳴り響く。


 ラムネの横に大きな氷の塊が現れそれが勢いよく衝突した。そしてそのまま地面に吹き飛ばされてしまった。もう終わりだと誰しもが思ったその時ラムネで隠れていたハルトからとてつもない大きな火の弾が放たれようとしていた。


「それは囮だァァァァァァ!!!!!!」


「どういうことですか、ハルトさぁァァァァあん!!!!!!!!!」


 放たれる火の弾はバチバチと音を鳴らしながらメルリルに飛んでいく。それをどうにかしようとしていたメルリルだがこれは氷の塊をラムネに使用してから一秒ほどの出来事。状況を理解し適切な行動をとるという判断をするのにはあまりにも短い時間である。それ故メルリルはもはや考える事すら出来ない。


 バゴォォォォォォン!!!!!!


 重たい音を轟かせながら火の弾は大爆発を起こした。爆発の影響は甚大で辺りにあった瓦礫などが舞い上がりどこかへと飛んでいったり麻衣美のドームにヒビが入ったりしていた。しばらくして爆発の煙が落ち着くと爆発したところには大部分が赤く染まり地面に倒れているメルリルの姿があった。


「ハルト! 今のすごいな!」


「いや、まぁ」


「ちょぉぉっと! 私の命の保証はなんでされないんですかぁ!!」


「そう言えばなんか威力高くなった気がするな」


「無視ですかぁ!!! 一番いけませんよ!!!?」


 そんな会話をしていると後ろからシノがスタスタとやってきてハルトのコートを引っ張った。


「ハルト、やった?」


「おい……そんなフラグたてたら……」


 メルリルから白いオーラが漂い始め次第にそれは激しくなっていく。バチバチと音をならすオーラを纏ったメルリルは地面に手をつき少しだけ体を起こすと翼は羽ばたかせ立ち上がる。


「私の邪魔をしないで……。【バッカルコーン】……」


 すると背中に生える翼とは別にさらに謎の六本の触手が現れ始める。六本の触手は不規則に動き地面を叩いたりしていた。


「おいおい、なんだよあれ!!!」


「ば、ばけものですよ!! あれは!!」


 触手は暴れまわりついには麻衣美のドームに激突した。その衝撃で防御結界は割れ中にいた生徒は驚きと恐怖で叫びだす者もいた。そしてメルリルは翼を羽ばたかせながら上へと上昇していく。


「私は流氷の天使。神に縛られた者。だけど私は取り戻すために戦いに勝ち、価値を示す」


 翼は羽ばたき触手は不規則に動く。まるでその姿は……


「悪魔だ」











**

「面白い」「続きが気になる」など何かしら思って頂けたらハートやフォロー、レビューお願いします!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る