33.vsメルリル② 共闘

「どぅわぁぁあああ!!!!!」


 ラムネは氷の障壁から飛び出すと周りにいる氷の鎧に向かって走り出した。ハルトが「勝手に行動するな!」と注意をするがラムネは戦闘に夢中なのか聞こえてるが普通に無視をしているのかはわからないが止まる気配はなかった。ハルトは呆れた後シノに氷の障壁をしまわせる。そしてハルトとシノは火の魔法で自身の防衛とラムネの援護を行い始める。


「このままだとこっちの体力が完全になくなって全員終わるな……」


「もう一発大きいのを」


「でも結局はあの鎧のやつが復活するから余計に体力を失うだけになるぞ」


「なら……この下の氷を溶かそ」


「この広範囲の氷を溶かせるのか!?」


「わからない。でもしてみる価値はある」


「……確かにそうかもしれないな。シノ、任せたぞ」


「……ん?」


「ん?」


 話が噛み合わなかった二人はその後数秒ほど沈黙の時間が続いた。シノはハルトが勘違いしていると理解しどうするのかを話し始めた。


「ハルトが溶かす」


「え!!? いやいや流石にこんな広いのを溶かすのは……」


「でも早くしないとラムネが一人でずっと突っ込んでっちゃう」


「そうだけど……。あーもうわかった。やるよ、全部溶かせば良いんだな」


「その調子。ハルト、がんば」


 ハルトはどの様な火の魔法で溶かそうかと考えだした。良く使っている火の弾は確かに溶かす力もあるが爆発を引き起こしてしまう上に広範囲を対象とする際には不向きだ。火の熱波を利用した魔法は広範囲に対して行うことは出来るもののこれほどの氷を溶かすという力は恐らく兼ね備えてはいない。となると炎を噴射し溶かすという方法か敷かれた氷を対象とし上から炎で押しつぶし溶かすかのどちらかが効率が良いだろうとハルトは考えた。


 そして最終的にハルトが使用すると決めた火の魔法は後者である。メルリルを中心とした半径二十五メートルを対象とし炎で上から押し溶かす。その際ハルト、シノ、ラムネの三人がいる場所に関しては対象外とする。


 ハルトは早速氷を溶かすのを実行するために手のひらを下に向ける。息を吸って吐いたハルトは手に力を込めて魔法を放とうとしたその時、後ろから「ハルト!!!」と名前を呼ぶ声が聞こえてくる。ハルトは思わず反応してしまい魔法を中断した。そして後ろを振り向いてみると馬車から降りてきた結華達が氷の鎧と戦い合っていた。さらにその後ろには血だらけの生徒も何人かいた。


 ハルトは後ろで結華達が危険な目にあっているが気にすることなく前を向き魔法を放とうとする。しかしハルトは魔法を放つことができなかった。そんなハルトはもう一度後ろを振り向く。


「溶かす作戦はやめよう」


「うん。わかった。もうあのちびを直接叩きに行くしかない」


「あぁ」


 どうしてハルトが溶かす事をやめたのか。その理由は結華達である。結華達は既に氷の敷かれた範囲に入っておりもしハルトが魔法を使えばもれなく全員死んでしまう。もしハルトがそこまで鬼ではなく自身とシノ、ラムネの様に魔法の対象外とした場合敷かれた氷のほとんどが対象外となり魔法を使用する意味がなくなってしまう。だからハルトは魔法を使用し溶かすということをやめたのだ。


「行くぞ!!」


「うん」


 ハルトは後ろが気になりつつもメルリルに直接攻撃を与えるために走り出す。前の方ではずっと氷の鎧と戦っているラムネが斬り数を減らしてくれていた。ハルトとシノも走っている間に近づいてくる氷の鎧に対して火の魔法を放ち溶かしていく。だがその度に遅れて新たな氷の鎧が生まれる為意味がない。


「シノ、後ろから頼んだ」


「任せて」


 メルリルを直接攻撃する役目はハルトが引き受け、シノはハルトがメルリルに対しての攻撃に集中出来るように少し走るペースを落とし後ろにつく。ハルトは拳に火の魔法である爆発を込めてメルリルにさらに近づく。だがメルリルはそう簡単に近づかせるはずもなく小さな尖った氷の塊をいくつかハルトに対して放った。その小さな氷の塊は小さいうえに高速で移動するため回避が困難である。その為ハルトは放たれた小さな氷の塊がいくつか体をかすり、血を流した。


 しかしハルトは諦めず痛みなど気にせず走り続けた。もはやこれくらいの痛みはハルトにとって気にするほどのことでもない。そしてハルトはメルリルの目の前まで来たところで殴りかかる。


「おらぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!」


 バッゴォーン!!


 大きな音をたて爆発を起こした。爆発で発生した煙の中からハルトが吹き飛んできて地面に転がった。ラムネは戦闘しながらハルトに声をかける。シノは急いで駆け寄りハルトの体を起こした。


「大丈夫?……」


「大丈夫だけど……今何が起こったんだ?」


「……わからない」


 その時煙の方から、


 バサン


 バサン


 と言った風が何かに動かされてるような音が聞こえてきた。その音が鳴ると同時に煙は一瞬で消え去りその中からは多少の傷はついているものの致命傷は負っていないメルリルの姿があった。そしてメルリルの背中の翼が動いていた。


「あれで飛ばされたのか! 翼なんでずるだろ……」


「ハルト!!!」

「東雲くーん!!」


 ちらっと結華達の事を見たハルトだがすぐに見るのを止めシノの手に触れる。ハルトはシノの目を見て「ありがとう」と礼を言って立ち上がる。そしてハルトは結華達に背を向けて話し始める。


「どうして来たんだ」


「私達も一緒に戦うため!!」

「ハルト、俺達で協力しよう! ここにいるみんなで共闘すれば勝てるから!」


「無駄な犠牲を出すだけだ。早く戻った方がいい」


「それは出来ない。俺達はこの国の人々を救うという使命もあるんだ。だから俺達はここからどかないしどかすこともできない。ハルト、一緒に戦おう」


 海斗、結華、楓、京香、麻衣美の後ろでは新たに新たに現れた氷の鎧と生徒が戦っていた。ハルトは戦い合っている音を聞いて理解する。彼らに何を言っても俺からは離れはしないんだと。


 ハルトは魔法を近づいてくる氷の鎧に放とうとしながら結華達に一言、


「勝手にしてくれ」


 とだけ言う。その言葉を聞けた結華達は非常に嬉しそうにしていた。そして結華と楓と麻衣美は非戦闘系能力スキルの為一度後ろへと下がっていく。京香と海斗は戦闘系能力スキルなのでその場に残り氷の鎧と接敵する。後ろからは少しずつ戦闘系能力スキルの生徒達が氷の鎧を倒し進んできていた。


「シノ、俺達もやるか」


「うん。私達二人は最強」


 二人はメルリルの方を見ながらそう言った。


 その近くにはひたすらずっと斬っても斬っても現れる氷の鎧と戦い続けているラムネの姿がハルト達の視界にちらちら映っていた。


「ちょっとぉぉぉお二人さぁああん!! いつまで戦ってればいいんですかぁぁぁぁあああ!!!!」











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