第3話:計画―大体上手くは行かぬモノ―

▶カレンがログインしました


「ごめん楓ちゃん、俺も無理だった」


携帯端末から聞こえる利一トシの報告を聞き、楓は計画が破綻した事を悟った。


トシがカレンを使っていたという事が発覚し、憂いが無くなった…

もっと言うならカレン自体が、存命時の花恋が時々トシに使わせていて

トシ操作で共闘した事も一度や二度の事ではなく

1/3くらいは事実上のトシのアバターでもあった事から

気にする必要が無くなったのもあり

どうせならサ終までの半年間一緒に遊ぶか…となった。


では何をするか?となり


エクセレントリビアのメインストーリーを二人とも大分忘れてるから

新規PC作ってそれをカレンかモミジのどっちかでサポートして

メインストーリーのラスボスまで楽に進めようという感じになった。




「まさか新規開始まで出来なくなってるとは…」


「課金が出来なくなってるからPC枠追加不可なのは解ってたけど…ねぇ?」


「どうする楓ちゃん?これじゃ計画ができないけども」


「…………どうしようかねぇ…?」


サ終まで楽しもうと計画された作戦はここに破綻した。


------------------------------------------------------------------------------------


「楓ちゃんがやってない間に追加された職業を解放するとかどうだろう?」


「あー…でもなぁ…」


エクセレントリビアというゲームの定石に

実装されている全ての職業をLV30まで上げるというものが存在する


理由としては職業毎のLV30に成ると得られる能力ステータス補正が

別職業になっても残るという仕様があり

それをするのとしないのとでは明らかにPCの強さに差が出るからである。


つまるところやらない選択肢は無いと言って良いものではあるのだが…


「そればっかりにかまけるのもなぁ…」


なにせサ終まであと半年しかないのだ


楓がやっていない間に追加された職業は5個と少なめではあるものの

その全てが就くのに面倒臭くて時間の掛かる試練クエスト達成クリアが必須な所謂上級職なのだ


楓個人としてはそういう手間も嫌いではない、寧ろ醍醐味だと思っているが

社会人でありゲームを遊ぶ纏まった時間を捻出するのが難しい現在、

サ終までの貴重な半年をそういった作業に費やして良いのかという葛藤があった。


▶KIYOSHI:お願いします


「うおっ何だ?」


「トシの方でも見えてるという事は…全体チャット?」


当然の事ではあるが、エクセレントリビアにもチャット機能は存在しており


―楓とトシは文字入力が面倒臭かったのに加え音声チャットをするには高価な外部機器が必要だったのもあってもっぱら携帯端末を用いて会話しているが―


ゲーム内フレンド若しくはパーティを組んでいる相手にのみ表示される個別チャット


一定範囲内に居るプレイヤー全員に表示される全体チャットの二種類がある。


前者の用途は言わずもがなだが、では後者は何に使うのかというと…


▶KIYOSHI:協力をお願いします


…この様に主に野良でパーティを組む為に使われる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る