第3話 お義父さんの突撃訪問でち!
気持ちが安定したらしい鈴木は、相変わらず豪快ないびきをかいて今夜も眠っている。
そして、俺、夜行性のハムスターに転生した佐々木進(ささきすすむ)ことサムは回し車で必死に走っています。
は?人間の頃はここまで運動はしなかった。仕事と昇進のみに固執していたからだ。
夜になると、俺は眠りからさめ、大いびきで震える部屋のなかでクシクシと全身の毛を整え、夜明けと共に眠りにつく。
鈴木とはすれ違い生活だが、好きだった、気にかけていた後輩のそばにいるのも悪くない。
鈴木が出社してから、暖房がついている事を体感で確認して眠ろうとした時だ。ガチャガチャと鍵を開ける音がする。
前に鈴木のお義母に会っているので、たいして気にしていなかったが、ドアが開いた瞬間、加齢臭で小さな鼻が曲がりかけた。
両足を立て周りを確認する。
知らない初老に近い男が入ってきた。
「なんだ、ルカはもう仕事に行ったのか...
せっかくうまい酒を持ってきたんだかだな、おっ、あのハムスターか」
どうやら鈴木の父親らしい。
酒が入っている袋をテーブルに置くと、俺のケージの前にあぐらをくんで座る。
「お前が来てから、ルカは楽しそうに電話してくるんだよ」
無口になる。ポツリポツリと話す。
「ルカには、母親とは再婚の父親で家でずいぶん寂しいおもいをさせた........今は仕事も楽しそうにして良かった...お前もいるしな」
少し寂しそうにシワをよせて笑う。鈴木の過去は知らない。初めて聞く話だ。
「ルカが慕っていたらしい、佐々木とかいう先輩が亡くなった時は、泣きながら電話がきたよ」
え?通夜の夜は付き合いだと言っていたのに?俺は戸惑う。
「でも、まあ、お前さんが見守ってやってくるれ、ダメな父親の代わりに、な」
それだけ、言うと寂しそうな沈みかけた夕日のように笑い静かに部屋を出て行った。
他の女性の後輩より仕事が出来ても私生活を話す鈴木ではない。
知らない鈴木の過去を知り、胸が痛む。俺はのそのそと部屋に入りながら人には知らない過去があると悲しくなりながら、眠りについていた。
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