第21話:野良試合敗北者レパード

「大変!ホープ!ブロちゃんが絡まれてる!」




私はこの現在進行形で酔っ払っている女を知っている




飛行少女レパード


私が神戸の野良試合で初めて勝利した獲物である




空繰遊戯では好成績だったらしい彼女はその驕りによって私に敗れた


そして、その後も何度か野良試合を仕掛けられ、その度に私は勝利した




賭け試合の賞金のほとんどはこいつから奪い取ったと言ってもいい




私はレイナに待っててと言い、堂々とレパードとブロッサムの前に移動する




「ああーん!誰だ…………」




「久しぶりねレパード。ところで何をしてるのかしら?」




「あ、あんたは……ホープ!なぜここに!?」




「いやいや、あんた出走表見てないの?私もあんたと同じ御影賞に出るんだけど」




「ホープさん!」




ブロッサムが慌てて私の後ろまで移動し、抱き着く




「よしよーし、怖かったねー。もう大丈夫だからね」




涙目の彼女をレイナにいつもやっているように頭を撫でて宥める




「それは知っているが……そのお前はブロッサムと知り合い……なのか?」




大柄な彼女がおずおずと聞いてくる。その姿は叱られて縮こまった大型犬のようだ




「ええ。私の可愛い後輩よ。んであんたは私の可愛い後輩に何してくれてるの?」




顔を近づけ小声で野良試合の件をばらすぞと彼女を脅す




「なっ……!そうしたらお前も……」




「金銭のやり取りはそちらも言いたくないでしょう?そうしたら貴方は当時素人だった私に負けた汚名だけが残る。さて、それでもいいの?」




「くっ……」




「納得したようね。いい子は好きよレパード。ねえブロッサム、どうして貴方がこんな奴といるのかしら?説明できる?」




「は、はい!」




ブロッサムの話によれば、飛行訓練中に一方的に絡まれ、野良試合を仕掛けられたらしい


結果、惜しくも敗れ、金銭は失わなかったが無理やりデートをさせられたとの事らしい




「なっさけな!女癖が悪いと思っていたけど、ここまでとは思ってなかったわ……てかあんた!私の事が好きって言ってたじゃない!」




「た、確かにホープの事は好きだ。……しかし、しかしだ。お前が選手になって、こっちに来なくなって、私はお前の事を忘れようとして……その時、天使にあったんだ」




そう言ってレパードはブロッサムを見る




「ひっ!」




「ちょいちょいちょい!悪いけどブロッサムは彼女いるからダメよ」




「なっ!う、嘘と言ってくれブロッサム!」




「コメット様……コメット様……」




「レインコメット。越前の帝王を知らないとは言わないわよね」




レインコメット。現在、関ケ原に最も近い飛行少女として活躍している飛行少女だ




「自分の愛する者以外に興味を見せず、また愛する者が傷ついた時に容赦なく追い詰める。彼女の狂信者に痛い目に合わされたくなかったら大人しくしてなさい。あーそれとこの言葉は誰にも言わないでね」




「ひっ!コメットの女だったのか……分かった!手出しはしない!手出しはしない!」




慌てて引き下がるレパード。賢明な判断だ




「さ、行きなさいブロッサム。私はコイツと話していくからね」




「あ、ありがとうございます」




そう言うとブロッサムはお礼を言い、酒場を後にするのであった




「さてと。レイナ、もういいわよ」




「むー!喉乾いたわ!」




「ごめんねー。その代わり、このお姉ちゃんが全部奢ってくれるそうだからじゃんじゃん飲みましょうか。いいわねレパード」




「う、うむ。了解した」










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