第12話:B級レース後楽賞

南海道連合郡の北に位置する備前国




その南部にある児島レース場の披露専用場を私は低速度で飛んでいた




『晴天の空に燦々と照り続ける太陽が今日も眩しい。今日も児島レース場は満員御礼。テクニカルな技術を持つ飛行少女を見る為に、賭ける為に、応援する為に集まっております。どこを見ても人、人、人!そして割れんばかりの歓声!』




『再度お伝えいたします。この難解コースでは事故やトラブルが多くみられますので、選手が飛翔不能状態となる確率が高いです。その代わり、メインレースのみ最低金額500円から、オッズは最低でも5倍から入りますので、皆様億万長者を目指してじゃんじゃん賭けてください!特に3連単は毎回大きな配当が出ております』




『そんなハチャメチャなメインレース後楽賞ですが、今回も豪華メンバーでお送りします!1番人気は威風堂々と披露場を飛ぶアメリカ生まれの女王、10番ルミナス!2番人気はカーブのプロフェッショナル、1番ミッドナイト!そして注目すべき飛行少女は朱雀賞でレコードを破った伏兵5番人気9番ホープではないでしょうか!』




『一年というブランクがありますが、彼女なりに対策をしてきているとは思われます。控室ではタウリンを35本も飲むと言う異次元的な事をしておりました。一方ルミナスも今回タウリンを5本から12本と倍以上飲んでいるとの事です』




『選手達の体重は大きく変化しておりません。コンディションの問題もないと見えます』




「さすが備前の強者達ねイーちゃん。みんな凄く生き生きしてるわ!」




「ああ、なんせ数々の修羅場を潜り抜けてきた者達だからな!取り合えずホープは今回は複勝だな」




「どうして?今回もホープは一着になるわよ」




「ルミナスが化け物過ぎるんだよ。そりゃあホープを信じてやりたいが、ここは奴のホームグラウンド。場数が違い過ぎる。善戦しても3着以内だろ」




そう、イーグレッドの言う通り、ここはルミナスのホームグラウンド


昨日勝率を考えてみたが、この子に勝つ可能性は10%しかない


だが、それでも一度受けた勝負。せめて3着以内には入りたい


いや、入らなくてはいけない……




『さて、そろそろ時間となりました。選手達が続々とレース場に移動していきます』




水上のコースと違い、下がコンクリートなので、私を含めた選手達はゆっくりと、カタパルトが設置された場所へと移動する




下がコンクリートという事はぶつかり合いで負ける=飛翔不能と捉えてもいい


死にはしないが、全身打撲による激痛に耐えれず再びすぐ飛ぶ事は不可能だからだ




メインレース手前のレースでも何人もの飛行少女が床に叩きつけられ、血を流し搬送されたシーンを見ている


それに私自身も訓練のしすぎで1回だけ床に落下した事がある




あの時の衝撃はすさまじく、医者から2日安静と言われたのだ


ちなみにレイナから泣きながらのお説教も受けた




あの時の涙目のレイナが可愛かったと思いながら、スタンバイする




前のレースよりも物凄い歓声が上がる




そして、ガシャンと音がし、足がレッグブースターによってロックされる




「ホープとか言うたのー、残念ながら早期リタイアさせてもらうで」




横でスタンバイしていた8番のマルガリータが私を睨みつけてきた




「ルミナスはあんたにお熱みたいやけどなぁ……。あれはウチのライバルや。引っ込んでもらうで」




「やれるもんならやってみなさい」




『さあ、各選手準備が整いつつあります。やはりメインレースともなると歓声が段違いです!現在1番人気のオッズは6.5倍!このオッズの期待にルミナス応えられるか!?さあ、最後の選手がブースターロックOKとなりました!B級後楽賞6000mまもなくスタートです!』




そしてレース開始の重厚なファンファーレが鳴り響く




『3!2!1!レディィィィィィ』




シグナルの赤色がゆっくり点滅し緑になった直後、私達18人の飛行少女達は一斉にカタパルトから射出され、一斉に大空に飛び立ったのであった




『ゴォォォォォォォォォォォ!』




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