第11話:独立飛行隊とカーブの対抗策

小浦レース場に来て、1週間が経った




さすがに1年のブランクがある為か、曲がりくねったコースに何度も激突し、痛みで覚えながらも私は懸命に飛行を続けている




……のはずだったんだけど




「そこの飛行少女!止まりなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!」




「しつこいなあ……」




独立飛行隊つまり、空を警邏している自衛隊員に追われてます




幸いにもコースに若干慣れて来ているおかげで、それなりに飛翔出来ている




「止まってください!貴方は今、どれだけ危険な行為をしているのか解ってるのですか!?」




執拗に追いかけてくる。しかし、こう考えよう




1人よりも2人で飛行した方が訓練のし甲斐があるんじゃないか、と




もう何度ぶつかったか解らない直角カーブをスピードを充分に落とし、曲がり、すぐにまたスピードを上げる




背後からぴったりとくっ付いてくる自衛隊さん。そこら辺の素人とは格が違う




そのまま直線に入ったので私はさらにスピードを上げる




時速70キロ。その背後を全く離れようとしない




「今!」




思いっきり身体を上に向けてその場で一回転し、急停止する




「ぐぉぉぉ!な、なんちゃってクルビット成功!」




身体に重いGが掛かるが、何とか耐える




そして、追っている自衛隊さんは勿論目標を失う




「えっ!?きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!」




鈍い衝撃音と共に、彼女は壁と熱いキスをするのであった






「くっ!つ、つまりあなた方は持ち主の許可を経て、ここで練習していたのですね!」




額を片手で抑えながら、自衛隊さんはようやく納得してくれた




「そうよ。ちゃんとオーストリム社の自筆サインの書類もあるわよ」




私の横で待機していたレイナがどや顔で書類を見せる




うん、可愛い




「なら、なぜ説明しなかったのです!?おかげで不毛な追いかけっこをしたじゃないですか!」




「だって、いきなり、武装した女が追いかけて来たから」




「そ、それはそうですが……私達には空から国民の安全を守る義務があります。その義務を果たしたまでです」




日本に厄災が訪れた時、真っ先に戦場に立たされたのは武装した飛行少女達だった




彼女達のおかげで厄災は去り、日本に平和が訪れたのだ




その後も、厄災の再来を防ぐ為に彼女達は今日も空を飛び回り、監視を行っているのだ




「なるほどね。取り合えず、レースに付き合って貰ってありがとう。おかげでいい練習になったわ」




「何か馬鹿にしてませんか?」




「馬鹿にはしてないわ。いい経験値になってくれて感謝してるのよ」




その後、自衛隊さんからのきちんとした謝罪はなく、去っていったのであった






「うーん」




「どうしたのホープ?」




帰り道、レイナが高台から撮ってくれた映像を見ながら私は唸っていた




「ここの直角カーブとかヘアピンカーブでスピードを落とさない方法を考えてるのよ」




楕円のコースはそれほどスピードダウンする事はほとんどない故に、ブレーキの掛け方がいまいちなのが課題だと私は思った




「そう言えばホープの1年前の難解レースの時も結構カーブでスピード落としてたわね!」




「そうなのよ。この課題をクリアしないとまずは備前の少女達には勝てない」




好成績を収めるなら3着以内が理想




だが、その3着までは備前の手練れた少女達が取る可能性が高い




早く解決策を産み出さなくては……






その次の日、私はレイナに無理やり休みを取らされた




休息も大事なトレーニングの1つと言うが、やはりカーブの課題が気になり落ち着かない




こんな時はレイナを愛でて、過ごすのが日課だが、この日に限ってレイナはフィオナさんと挨拶回りで不在




家にいても仕方ないので、日課のタウリン20本を摂取して外に出る




電車を乗り継いで商店街へ




別に飛翔して行ってもかまわないのだが、今日は完全な休日


飛行する事はレイナに堅く禁止されている




可愛い優秀なサポーターの言う事は聞かなくてはいけないのだ




「あー!ホープちゃんだ!」




私がおもちゃ屋の傍を通ると、数人の幼女がこちらに向かって声を掛けてきた




「あら可愛い天使ちゃん達、こんにちは」




彼女達は昔から私の顔なじみでありファンでもある


皆それぞれ手にモーター付き自動車模型を持っている




「あのねあのね!私達、今から!レースするの!」




「へーそうなんだー」




そう言って、一人の幼女の頭を撫でる。ああ、癒される




「見て見て!最新鋭のマシン!肉抜きとか、一杯したんだよ!名前はヴェノムスパイダーって言うの!」




マシンを見せてくれる。うん、セダンの形で窓とかが全部繰りぬかれて、漆黒に染めてるわね……




「私のマシンはねークレイモアバスタード!」


「私のはデスペナルティ!」




何で皆そんなにおぞましい名前を付けるの疑問だ。てか最近の幼女は難しい言葉を知ってるのね




「うん?」




そんな時、私はふとマシンに付いているある物に目が行った




模型の前の両サイドに付けられたローラーだ。


模型は真っ直ぐしか走らない為、コーナーをうまく曲がる事が出来ない


それをスムーズに行う為に付ける




「あっ!」


その時、私の頭の中に電流が走った




「どうしたのホープちゃん?」




「い。いえ。何でもないわ。それじゃあ頑張ってね」




私はそう言って再び幼女達の頭を撫でて、ドラックストアに向かって駆けだしたのであった








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