第9話:凱旋

朝目覚めると、隣に引っ付きながら安らかな寝息を立てているレオナの姿があった




「可愛い……」




綺麗な金色の髪を優しく撫で、起こさないように彼女からすり抜けベッドから起き上がる




昨夜のルミナスから貰ったキスにより、レオナの不機嫌度はMAX


そのまま、私に引っ付いて離れない彼女に苦笑した私は、ナタージュ邸に電話をし家に泊まらせる事にした




ほんと、フィオナさんは理解が早くて、信頼してくれて助かるわ




収入が不安定である飛行少女な私であるが、都内の1LDKのマンションに住んでいる


広さは7畳ほどで、ベッドとPCデスクのみと女性らしさの欠片もない部屋だ




洗面台で顔を洗い、ベッドに座り、タブレットでニュースサイトを開く




『9番人気のホープがレコード更新!?秘訣はタウリンどか飲み!?』




『飛行少女の常識を破った攻略法!学会も動き出す!?』




『ホープ効果で街中のタウリンが売り切れ!どう責任を取るのか!?』




『22年の沈黙を破った希望の光』




トップニュースになっててめっちゃ目立ってるわね……




その後に、南海道連合郡に関するニュースを見ていく




『最先端の皮膚移植、傷痕を完全に無くします』


『目立つ傷痕、多面タトゥーの痕跡を無に還らせます』




その記事に見た時に、私は左目を押さえる


私は過去に顔の左半分に大怪我を負い、結果傷痕が左目上から下の頬に掛けて残ってしまった




もしこの記事が本当なら、私の醜い傷も消えるのだろうか?


だが、その為には多額の金と長い時間が必要だ


治すのは引退してからだな




「ん……」




そんな事を考えてると、私の婚約者が可愛らしい声を出した後ゆっくりと目を開けた




「ホープ……」




「おはよう、お姫様」




挨拶をし、頭を撫でるとレイナは嬉しそうに微笑んだ


良かった。機嫌は治ったみたいだ




レイナを洗面台まで連れて行った後、私は冷蔵庫からキンキンに冷えた缶コーヒーを2本取り出し、1本を婚約者に渡す




缶コーヒーに含まれるカフェインが眠気を一気に覚ましてくれる




「ネットニュース……ホープの事、一杯書いてて嬉しい」




「目立ちたくはなかったんだけどね……」




タブレットからは相変わらず、昨日のレースがダイジェストで放送されている




『タウリンの過剰摂取には、弱点があります。我々人間はタウリンを過剰に貯めておけない構造なのですよ!ありえない!』




馬鹿な専門家もいたもんだ。我々超能力者は他の人間と身体の構造が違う事など誰もが知っているだろうに……未だ超能力を信じない化石頭がいる事に驚きだ




「むぅ……こいつホープの悪口言ってるわ!」




「言わせておきなさい。私はもう少ししたら後楽賞の出場登録をしに行くけど、レイナはどうするの?」




「もちろん一緒に行く!だって私はホープの相棒だもん!」






『空繰遊戯総合センター』の扉を開くと、飛行少女達に抱き着かれた




「ちょ、ちょっと何なの!?」




「おめでとうホープちゃん!凄かった!」


「西海道の二人を破るなんて中々出来る事じゃないよ!」


「鬼神破るとはお前こそ南海道の誇りじゃ!」




「ちょ!恥ずかしいから離れなさい!」




「ホォォォォォォォォプちゃぁぁぁぁぁん!」




その人混みを掻き分けてやってきたのはテンションの高い受付嬢さん




そして思いっきりハグをしてきた




「レースみてたわよ!おめでとう!本当におめでとう!お母さんね、凄く感動して泣いちゃった!いい、あなたはやれば出来る子なのよ!もっと自信持つのよ!」




「う、受付嬢さん!離れて!わかったから!」




レイナを見ると、やきもちを通り越して若干引いてる


そりゃあ涙を流しながら抱き着き、頬ずりしてくる人間がいたら引くわよね




私は受付嬢さんを落ち着かせ離れさせる




「ああ、ごめんなさいね。でも皆本当に喜んでるのよ。今まで西海道や北海道の飛行少女がここの記録を塗り替えていった。しかし、昨日ホープちゃんがそれをまた塗り返した!これは大変名誉ある事なの!」




その言葉に他の飛行少女達が頷く




そう言われると凄く照れる




「だから誇って!そして、南海道に奇跡を起こして!」




私の顔は今、すごく赤くなっているのだろう




嬉しいけど、すごく恥ずかしい




だから私は目立つのはいやなんだ……




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