第8話:宴
「それではホープ優勝とレコード達成を祝って!乾杯!」
「「かんぱぁぁぁぁい!」」
行きつけの店、居酒屋「みすてりあす」の個室にグラスを重ねる音が響いた
「それにしても、レコードとはやるなあホープ!さすが私の永遠のライバルだぜ!」
ビールを一気に飲み干し、イーグレットが私を抱き寄せ褒め称える
「ありがとイーグレット。これで関ケ原に行く自信が着いたわ」
私が湖に落下して、係員に陸に引き上げられた後、掲示板に載った自分のタイムを見ると横にレコードと付いている事が解り、唖然とした
レコード、つまり新記録
確かこの朱雀賞でのレコードは22年前から破られてなかったはず
それを……私が破ったのだ
ちなみに私に賭けられたオッズは単勝70倍、複勝で8倍と大番狂わせ
誰もがワンツーフィニッシュと思っていただけに、会場は賭けていた者にとって阿鼻叫喚であった
てか、表彰式後のインタビューに皆驚いてたな
『勝つ為にした事はタウリンの過剰摂取を試してみただけです』
タウリンの本数を言った時の記者の顔は今見ても笑える
「私の予言通りになっただろ?お前はやれば出来る奴なんだからな!」
「予言って……目の前に座っている元凶が言って来たんじゃないの」
そう言って、私の対面に座って酒を飲んでいるルミナスを軽く睨む
「てか何でちゃっかりと宴に参加してるわけ?後、なぜ朱雀賞のレースを取消したのか理由をいいなさい!」
「そんなの簡単よ。宴に出ているのは、単純に貴方のファンだから。朱雀賞を取り消したのは貴方の実力を観客席から見たかったから。そして単勝を買って記念にしたかったからかしら」
そう言ってルミナスはポーチから飛券とびけんを取り出す
「ちょ!ちょっと待て!12番ホープ単勝百万円だと!!」
イーグレットが驚きの声を上げる
「この飛券が六千万……」
私の隣に座って終始腕を絡めているお嬢様のレイナも驚いている
ちなみに彼女はまだ13歳なので飛券は買えない
「お前、馬鹿なのか!?」
「あら、そういった貴方はライバルを信じれなかったのかしら?全く、愛がないわね」
「そりゃあ私だってこいつの飛券を買ったさ!だがよ、そこまで大金を賭けれるなんて異常だぞ!?いくらお嬢様だからって……」
「ふふふ、私はそれほどホープに夢中ということよ」
そう言ってルミナスは顔を赤らめる
「むっ!……ホープは私の。渡さない」
そう言ってレイナが横から抱き着く
「あら、渡さないと言ってもこのままの成績を維持しなければ、彼女は希望・オーストリムになるのよ」
「ホープ!私、この子嫌い……」
そう言ってレイナがルミナスを睨む
うん、睨んだ顔も可愛い
「うん、私も同感ね。……でもファンと言ってくれたのなら無下に出来ないし、かと言って同席は本当は遠慮してもらいたいけど、今更出ていけとは言えないし」
凄く複雑な気分なんだけどね。それに、この子は本気で私を潰そうという気が見られない
何故だろうか?
「取り合えず、次のレースなんだけど2か月後に開催される後楽賞でいいかしら?」
「後楽賞って……備前国の児島レース場で開催されるレースだよね?」
「そうよレイナ。後、楕円形じゃなくてF1レースみたいにコースが複雑化している危険な場所でもあるわ」
F1のコースみたいに、ヘアピンやS字、スプーンカーブなどが用意されており、飛行少女達が最も苦戦するレース場でもある
「おっ!俺も出た事あるな!これ!楽しかったけど、すんげー難しかったぜ」
「確かあんた、デビュー後にこれに出て最後のヘアピンで壁に激突して最下位になってたわよね……」
「ああ、あん時は死ぬかと思った。ま、俺は今回このレースは出ないけどな」
彼女の額の傷痕、それはこのレースに出て出来た傷痕である
「正直、私はこのレース出たくないんだけど、関ケ原に行くには避けて通れないのよね」
「そうよ。関ケ原はこのように楕円のようなコースばかりではない。だからこそ、あなたの為に用意したのよ。もちろん、出場登録も嫌でもしてもらうわ。私が出るレースだからね」
「強引ね。拒否権はなさそうだし、了解したわ」
その後も、ルミナスは飲み食いしながら積極的に私に絡んできた
後、敵なのに凄く褒められて本当に不思議な子だなと感じた
しかし、褒められる度に、隣のレイナが不機嫌になり頭を撫でてやったり、食べさしたりしてのご機嫌取りが大変だった
でも、可愛いから許す
やがて、夜も遅くなりそろそろ会計という事になった
「ここは私が払うわ」
そう言ってルミナスが伝票を持ち、立ち上がる
「え!?悪いって!皆で割り勘。もちろんレイナの分は私が払うわ」
「何言ってるのよ。あなたのおかげで飛券が何千万に化けたのよ。つまりはあなたのおかげ。それに、邪魔をしたにも関わらず迎え入れてくれた事に感謝よ」
「それでも……」
「じゃあ、ホープ。1つお願い事をしていいかしら?」
「え、ええ。私に出来る事なら……」
私は最後まで台詞を言いきる事が出来なかった
頬に伝わる、柔らかい感触
そして、優しい甘い香りが私の鼻をくすぐった
「な、ななな……」
この女、躊躇なく私の頬にキスしやがった
「ふふ、まだ頬にしておくわね。これが私のお願いよ。将来の花嫁さん」
その後、レイナの叫び声が響いたのは言うまでもなかったのであった
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