探索者達
「探索者パーティーの名前どうする?」
天才・坂田が話しかけてくる。
そう、俺はここんところの説得続きに飽き飽きして、いよいよパーティーに入る事にしたのだ。
部屋にいるのは俺こと天瞳凛。そして……なぜか居る一ノ瀬。
コイツ……本当にエスパーなんじゃないのか?
一ノ瀬もパーティーのメンバーに入りたいと都合のいいタイミングで言ってきたのだ。
「ん~と、俺は『黄金のなんとか』、『翼のなんとか』みたいなそれっぽいのがいいな。なんかこう強そうな名前。」
「適当ッ!!ボクはちょっとそういう中二病なのは……頭文字で良くない?」
「確かに……一ノ瀬、天瞳、坂田―――ITSとかでいいか?」
「御意。」
「御意。」
という流れで、パーティー名はITSになった。
「ていうかそもそも、坂田はどうやってSランクになったんだ?」
「ん~とね、種明かしをすると僕のスキルは『付与魔法』。」
「『付与魔法』・・・?あんまり強そうには感じないけど……もしかけてチートなタイプの付与魔法……?都合よく覚醒するタイプの……」
付与魔法は味方にバフをかける支援魔法だ。
付与魔法といったら、追放されて覚醒ってのがテンプレだけど……
「都合よく覚醒?何を言ってるんだ凜は。……むしろその逆、付与魔法の最大のメリットはとても弱く発動できるところさ。」
弱く発動……?そんなことをしたら不利になるじゃないか。
何を言ってるんだこいつは?とうとう気でも狂ったのか?
「付与魔法は普通の戦闘で支援をするだけなら弱い。必要魔力量もそれなりに多いし……けど、弱く発動させれば魔力量は抑えられる。」
「だからそれがどうしたっていうんだ。別にそんなの当たり前の事だろ?弱い魔法を使えば魔力の消耗が小さいなんて。」
「ああ、その通りだ。だから僕は人気ダンジョンの前に朝から張り込んで、ダンジョンに来た探索者達に凄~く薄い付与魔法をかけ続けた。」
本当に何を言ってるんだ……?
ボランティアなんていつになくおかしい。
いや……待てよッ?!まさか……
「もう分かったみたいだね。付与魔法をかけた者は徒党を組んで戦闘に参加した判定になって探索者達がモンスターを倒すごとに経験値を獲得できる。僕がやっていたのはダンジョンの前で、魔力回復アイテムのポーションを飲みながら、のんびり新聞を読む事だったんだ。」
半自動レベルアップか!
俺がレベルアップしている間、坂田は坂田のやり方でレベルアップしてたんだな。
追放どころか、ほぼ無能魔法で経験値を分配させるなんて恐ろしいヤツである。
「魔力量とレベルがすっかり上がった僕は、Sランクとなり……他のSランク探索者にとても弱~く魔法をかけ続けている。効果時間も魔力消費を多少多くすればいいんだ。特にソロ活動が多い彼らからは良く経験値が稼げる……という訳さ。」
流石……坂田といったところか。
やっぱり坂田は最高で最低なヤツである。
信用してくれてるから話してくれたんだと思うけどな。
「ボク、結構ヒキョーだと思うんだけどな……それ。」
「むむむ、一ノ瀬。坂田はこういうヤツなんだ。」
「とはいっても二人にはかけないよ……全く。ただ、凛にはちょっと掛けてた時期があるんだよね。コレは別に経験値を巻き上げる為じゃなくて、探索者をやってるかどうか確かめる為だったんだけど…………さぁ、凛話してもらおうか?常に起こっている不自然な経験値の流入をッ!!」
こ、こいつッ……?!
まさか探索者と思われたのも、そうか!コイツは無能付与魔法をかけるだけで、探索者かどうかが判別できるッ……!!
おそらく、他の付与魔法をすべて解除して俺が探索者かどうかを確かめていた―――そして俺が学校にいて「モンスターを倒していないはずの間」にも坂田の方にも経験値がいってレベルアップしたんだ。
多分、グラン達を戦闘させていた事により俺も眷属を戦わせている状態――戦闘時判定になる……それに坂田が付与魔法を掛ける事で経験値を一部奪い、坂田自身のレベルが上がったんだ!!
自分のスキルを坂田が明かしたのも、俺がスキルを明かすハードルを下げる為ッ!?
「……そういうスキルがあるんだよ。」
「「――――マジ?」」
「マジ。」
二人にバレてしまうなんて……やっぱり坂田明は伊達じゃない男だ。
できれば一生バレたくなかったのに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます