発動の条件
いくら怠惰な俺でもダンジョンという言葉には若干の魅力を感じてしまう。
少年心理……あるいはロマンといったところだろうか?
ただいつものあのダンジョンなんか変だ。
とにかく強さが異常だし……俺が弱いだけじゃないはず。
そうならちょっと悲しい。あれだけ悲惨なレベルアップが起こってるのに。
俺は放課後の現在、またダンジョンに来ていた。
正直なところグランやライムに頑張って貰えばしばらく出向く必要もないのに。
「俺のスキル『
「ほう、それは興味深いのぉ。儂やライム殿のようなレベルが高い者はテイムできたのに・・・なぜ悪魔のディア様には効果がなかったのか。」
そう。ほぼ無条件でテイムできるものだと自然に思っていたが、あの悪魔の一件では効果が見られなかった。
まだサンプルが少なすぎるものの・・・推測は何個か立つ。
「まず、一つ目はあの悪魔が特殊な場合だな。つまりそもそも悪魔という種族自体がテイムできない、あるいはあの悪魔のレベルがあまりにも高すぎる場合だな。」
「ふむ・・・納得はできる理由付けではあるものの・・根拠が薄いのお。しかも悪魔にも眷属、従魔の関係は一応存在する。」
そう、こんな感じの暴論は世の中に溢れるデタラメとあまり違いが無い。
しかも俺の様なファンタジー志向の人間はやはりこう考えてしまいがちになる。
「ただ、もう一つの考え方もできる。グランは魔人ゲルドに支配されていたと言っていたよな。そして異世界ダンジョン化計画――ピラミッド型の特殊なダンジョンは恐らくその計画において重要な意味を持っているはずだ。」
「なるほど。お主にしては随分頑張った推理じゃないのかのぅ?」
「そう・・・かもな。そしてモンスター達の異常な強さ。これは色んな推論が立つにせよ、戦力を大きく割いてるんだから『その場所を崩されたくない』というメッセージだ。つまり拠点のような・・・」
「それは恐らく正解じゃろうな。魔人ゲルドは高位の魔族じゃからの。」
「そうなら・・・あのダンジョンの魔物達の中にはそのゲルドというやつ、あるいは他のヤツの眷属がいるんじゃないか?という事だ。
ライムと最初に戦った時も少しだけ怯えた様な感情を見せた・・・『変幻自在』が使えるライムなら隠れる事は容易だったはず。
つまり何らかの命令を受けて人間を襲っていた可能性がある。」
「感情を見せた?なんとなく感じたということかのう、お主も奇怪な事をいう。
そしてその他のヤツとは例えば・・・魔王様のような存在なのかのう?」
中々真に迫ったように言うグランに少し鳥肌が立った。
そこまではちょっと知らないけど・・・
「それはまぁ、そんな感じかなと思ってる。だから俺の立てた推論は『誰かの眷属に限って自分のものに出来る』これが二つ目。」
そう・・・NTRを意図的に引き起こすスキルだとすれば・・・
眼の前には賢者・・・?スライム・・・?
魔人ゲルドのスキルは『強制催眠』―――いや待てよ・・・?!
まさかここはエ●ゲの世界なのか・・・ッ?!
いや、考えすぎだな。寝れてないからこんな考えが浮かぶんだ。
さっきまで真面目に推理してたのに!!
「ふむ・・・それは筋がなかなか通っているんじゃないかのう。普通誰かの眷属を奪う事が出来ないが、儂は魔人ゲルドの眷属からお主の眷属になった。
悪魔は契約によって生きながらえる種族・・・眷属という関係は存在するが、あまり聞かないのぉ。種族の性質上、むしろ騙して寿命をふんだくるような事もあるとアーノルド様は言っていた。ましてはとてつも無い強さを持つディア様のことじゃ。」
例の先代魔王か。
悪魔は寿命を削ってまで契約する程有能なのか?
・・・やはり悪魔というのはなかなか強い奴らのようだ。
「俺は怠惰という意味に従うなら二つ目の方が正しいような気がする。なにせ眷属を見つけてくる手間すら省くんだからな。」
「それは・・・そうじゃのう。一先ずそれに従ってやってみて、反例がでたら違う解釈を試みる。それでやっていくんじゃないかのう、魔法の習得と同じじゃ。」
「そうだな。じゃあ方向性は決まったな!今日も潜ろうか・・・ダンジョンに!」
そういうと俺達は既に七階層に入っていった。
グラン達が勢いで攻略してくれていたらしい。
しかし、知恵のあるようなボスは見つかっていないとのことだ。
もし対話できるような敵が現れればヒントが得られるかもしれない。
謎は沢山あるものの、俺達は今日もモンスター溢れる迷宮を駆け抜ける。
魔石の換金の事もあるし・・・パーティーどうしようか。
坂田のヤツS級だって言うし・・・悩みどころだな。
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