高校と天才
「お~い、凜。起きてよ~。」
ダンジョンが校庭にできてしまったので新しい学校に転校してきて一年が経った。
こうして絡んでくるのは天才・
今、起きたので視界がぼやけているな。
早めにコイツに対処しないとめんどくさい事になりそうだ。
『レベルが上がりました。』
グラン達にはダンジョンで魔物を狩って貰っているので、経験値の二割が自動で俺に還元される。
すごく良く機能していて、授業中さえ滅茶苦茶にレベルが上がる。
なによりライムやグランの強化に・・・ていうか元からレベル高すぎだな。
「だから凜ってば・・・次の時間体育だって。遅れるよ?」
高校三年の冬休み明けなんてほぼ授業に出る必要性が皆無だ。
評定はもう決まっているし、今更体育なんてやってどうするんだ。
天才・坂田は全国模試一桁の常連の癖に、運動もそこそこできる変人である。
そして、レベルやスキルが登場してから運動という概念すら変形してはいるものの・・・人間は運動不足ならストレスが溜まるし、運動はストレス解消にもなるので継続されている教育である。
そして厄介な事にコイツは無駄に絡んでくる。
誰が野郎の温もりを所望したというのか?
これだったら可愛かった分、一ノ瀬の方が何十倍も良かった気がする。
・・・少なくても高校では、失って初めて気づく大切さは人間の都合の良さをやけに強調してくるので少しだけ嫌な気分になった。
「なんで俺に絡んでくるんだよ~、坂田はさ。東帝大学受かったんだろ?
それならもっと有益な事が他にあるんじゃないのかね?」
「いや、東帝大学は蹴ったよ?僕、探索者になるからさ~。」
「へ、へぇ・・・?」
コイツ正気か?
変人な事は前々から知ってたものの、名門の東帝大を蹴って探索者だと?
いつも通り狂っているな、良し。
「いや、またまた~。
友達として止めるけど・・・それは流石に・・・強いスキルとかがないと。」
流石に止める。まぁ短い間ではあったが、普通に仲良くしているし・・・
それに、なんだかんだ面倒臭がりつつも人間として切ってはいけない繋がりのような気もしなくもない。
『条件:『格上への説教』を満たしました。』
『ユニークスキル『愚者の心得』を獲得しました。』
『ユニークスキル『愚者の心得』はユニークスキル『
またまた嬉しくはねえよ!誰が愚者なんだっていうんだ。
確かにコイツは模試の成績も人生も俺より上手くいってるのかもしれないけどさ。
ただ・・・いつだって辛辣なスキルは全く正しいんだろうからさ。
「大丈夫。僕はこう見えて既にSランク探索者だからね。
食うにも困らない額を毎月稼いでいるのさ!
そして友達の凜君をパーティに誘おうと思ってね、
実力者を集めて新しいパーティを作ろうと思ってるのさ!」
「へ・・・?てか俺探索者やってるなんて言ったっけ?」
バレている。てかSランク探索者だと・・・?
完全に坂田のペースで物事が進んでいる。
飄々としているのに、これだから一々気が抜けないんだ。
「言わなくても分かるよ。
最近、いいものを喰って丁寧な暮らしをしているでしょう?
髪のセットから爪まで、人の余裕は滲み出るものだからね~。僕は税金のちょっとした対策のついでと・・・換金の手間を減らしたい。」
いや女子みたいな視点だな。そこまで見なくていいわ!
・・・にしてもなぜ探索者だと分かったのか?
『レベルが上がりました。』
グラン達頑張りすぎだな、今日もう六回目だぞ。
効率がいいな本当に。
あるいは・・・俺のレベルアップが加速している・・・?
おかげで昼寝できないけど、それは今に始まったことじゃないか・・・
ここまで来たら、もうレベルも上がりきって欲しいものだ。
「ん~、まぁ悪くないけど、Sランクってんならさ。でも俺は色々やってるし、一緒に冒険できるかわからないよ?・・・そうだなぁ・・どうしようかな?」
「まぁ、考えてみてよ。僕はなんとなく凜は天才風だと思ってるからさ~」
“風”ってなんだ、風って!
そこまで言うならちゃんと褒めてくれてもいいってものなのに。
計算してこんなことを言ってるのか?めっちゃ厄介だな・・・
「考えてみるさ。成績次第かな・・・?ははは。」
とりあえず茶を濁すと、五時間目のチャイムが鳴った。
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