『最近、原因不明のレベルアップに悩まされている。』・1

 side:~薬師~


 私は魔王リドル様から追放され、今は元居た世界ではない・・・異世界でも医学・薬学に携わっています。

 


「お前は父さんの好意で雇われただけの無能っ!!この魔王城からでていけ。

 ・・・これは試し打ち、空間魔法で異世界へ送ってやろう。」


「ひっ・・・お、おやめください・・・・私はリドル様の為に働いてきました。

 どうかご容赦を・・・」


「フハハ、命まではとらないでやろう。

 あの悪魔がじきに弱体化するまでなぁ。契約の魔剣はスライムにでも食わせておいたよ・・・これで父上の“無限の寿命”はもう使えない!!」



「し、しかし私がいなくなればリドル様の体調を管理する事が出来なくなります。

 こればかりは、アーノルド様に申し分が立たないので・・・」


「えええい、うるさい!!さらばだツネダ、消え失せるのだッ!!

 貴様もせいぜい異世界で苦しみもがきながら死ぬといいっ!!」



◇◇◇


 流石に・・・言い過ぎじゃないですか?

 あと無駄にゴロがいい。


 私のユニークスキル『神薬調合』は、親の代から引き継いだ“ちーと”というものらしいです。記憶力を倍増させたり、強さを引き出したり、そういった薬を作ることが出来ます。


 実際私は小さいころから・・作り出した薬で学習効率を高めながらも父から異世界の算数や、化学知識を教わっていました。

 

 異世界の文化にも触れる事ができ、それだけでも十分に財産だったのです。

 幸いな事か、不幸なのかよくわかりませんがハーレムメンバーが崩壊したあと他の兄弟たちと別れながらも、父は私の実母とはずっと一緒でした。


 私は勇者として召喚された父からの贈り物の二つ目・・『全言語理解』をもっており、異世界の知識を詰め込んでいたので異世界では十分な職を獲得できました。

 その年で、ちょっと危ない手段で日本国籍と身分証をとり・・大学にも貸与型の奨学金で通いましてね。

 異世界から来たのでこれくらいは・・許してほしいものです。


 しかし、私が生涯の主と拝むアーノルド様と離れてしまったことは残念でなりません。いつか・・・必ず救い出して見せます・・・。

 

 そして今日、凛様とお会いすることができました!

 しかし、まだ記憶は取り戻していない様子・・・ですがそれはアンリ様から聞いていた事です。今は秘密にしなきゃなりませんね。


 しかしまさか・・・アーノルド様の為にあれだけ怒っていたリン様がね。


 グランと一緒に来てくれました。

 ・・・そして、相談を受けたとき唖然とさせられました。

 『自然発生するレベルアップ』・・・?

 私は驚き、焦燥してしまいました。


 

◇◇◇


 私は有数の魔導医師・薬師だったので、魔王国ではかなり名が知れていました。

 いつも診察で多忙な毎日も悪くないなと思っていたところです。


 しかし・・・新任の魔王から招集がかかった時は驚きました。

 

 それが私とアーノルド様の最初の出会いだったのです。

 

 新任の魔王であるアーノルド様はユニークスキルに覚醒していないと聞いていたので・・・私の薬の効果の筋力増強や魔力増強を期待したのか?なんてちょっと邪推しました。


 あるいは、新婚だと聞いていたのでそっちの薬を期待しているのか?なんて。

 

 

「ええ、本日はお呼びいただき誠にありがとうございます。

 そして、どのような事にお悩みでしょうか?」



 しかし、私のそんな類の邪推は一気に弾け飛びました。

 そのくらい、私に寄せられた相談は衝撃だったのです。




「やぁ、薬師のツネダさん。今日は来てくれてありがとう。

 ・・・僕は“最近、原因不明のレベルアップに悩まされている。”」



 



 




 



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