追放されたチート薬師
「チート薬師」
・・・・ラノベを読めばこの設定は耳馴染みしか無いはずだ。
ダラけきっていた俺は確実に五回は見たことがある。
『レベルが上がりました。』
冬休み明けの始業式を終えた俺は病院に来ていた。
待合室で常田先生のお昼休みを待ってから部屋に入る。
「あのぉ・・・すいません常田先生ですかね?」
扉の先に見えるのは眼鏡をかけた真面目そうな男・・・
40代くらいだろうか?
この人が常田先生か・・・・いい人そうだな!
「凜君。今日は来てくれてありがとう。
グランの主なんだって?大変だろうに・・・・」
常田先生の温かい目線が逆に突き刺さってくる。
そうなんです・・・この子ほっとくと空飛んじゃうんです・・・・
困った子をみるような目をグランに向けてみる。
「お主、儂はそこまでボケちゃおらぬよ。
ツネダよ・・・今日はこやつの悩みでのう。
こやつは最近、自然発生するレベルアップに悩まされているのじゃ。」
常田先生は目をパチクリさせて口を大きく拡げ切っている。
流石にその事実は先生にとっても驚愕のようだ。
「ああっ・・・そ、そうなんですね。
なっ・・・なかなかな“チートスキル”じゃないですか。
しかしなぜそれに悩まされているのですか?」
常田先生は流石に驚いたようで、言葉にも動揺が現れていた。
なんか申し訳無いな・・・いい人そうだし猶更。
「んんん・・・そうなんですがね、レベルアップ音がうるさくて起きてしまったり、
例え寝れても・・・起こされると習慣付いて急に起きちゃったりして。」
俺は現状一番の問題を伝える。
これは睡眠が好きな俺にとっては史上最悪な問題だった。
「ふむ・・・私の力でどうにかなるのかどうかは・・・分かりません。
私は『神薬調合』というユニークスキルを持っているんですが、そのような薬は多分作れませんね・・・麻酔状態ならあるいは・・・」
いや麻酔状態って・・・圧倒的に科学でなんか怖い。
ユニークスキル『神薬調合』かぁ・・・
なんかすごそうなスキルだが、俺には難しいようだ。
「全然大丈夫ですよ・・・もともと解決しなそうな問題なんですから!
そういえば常田先生はどうして地球に?」
「あぁ・・・私の場合は・・・追放されてしまいましてね・・・」
追放された異世界薬師!!こんなところにもテンプレがっ!?
最近、身の回りで起き始めている。
これはファンタジーの影響なのか・・・?
「魔王リドル様から『お前は父上が雇っていただけの無能だっ!』
と言われてしまいまして。リドル様は空間魔法の凄まじい使い手で・・・異世界ダンジョン化計画の実験台にされました・・・ははは飛ばされましてね。」
ははは。じゃねーよ!
てか異世界ダンジョン化するのやめろ!
魔王リドルってヤツもつくづくテンプレというものを知らないヤツだ。
「ほ・・ほう、大体掴めてきました。あなたはその魔王リドルに追放された・・・という訳ですね。そういえば常田先生は・・・ツネダと名乗っていたらしいですが異世界出身なんですか?」
「・・・・これは私の父親から聞いた話なのですが、父はある日クラスメイトとともに勇者として召喚されたらしいんです。しかし、王国に無能だと・・・追放されハーレムをつくりながらも・・・魔王に認められ、魔王国で私を育てたそうです。」
「それはもう・・・流石に呪われてません?」
いや親子揃って追放なんて!!
そしてしっかりハーレムも作ってやがる・・・ッ!!
いくら何でも呪いじゃないのか?
そんな追放されてばっかなんて・・・
「呪い・・・ですね。ハーレムもみんな子供が出来るまでは良かったんですが、子供が出来てからは崩壊しました。みんな自分の子が一番可愛いのでしょう・・・
特に子供への待遇については揉めに揉めましてね・・ははは。」
いや夢無いな異世界!!
先駆者の癖してとんでもない目にあっていやがる!!
そして母性本能というヤツはいつの時代もどんな場所でも形を変えないものらしいので偉大なことだ。
「こらっ!失礼じゃぞ。
ツネダよ・・・すまんのうこやつは常識がないのじゃ。」
「いいんですよ。まぁ今日は本当にすいません・・・
治す薬も用意する事ができずに・・・」
・・・うっかり呪いとか言ってしまったな、気を付けよう。
こっちのフザケでも向こうの世界ではどんな意味を持っているかわからない。
落ち込んだように言う常田先生には申し訳ない気持ちになったが、結局その日は家に帰る事になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます