先代魔王
『ユニークスキル『
そんな声が暗闇の中聞こえた気がした。
途端、まるで夢のように俺は何もなかったかのようにそこに立っていた。
ん・・・どういう事だ?
俺は・・何をしてた?
「あら、アーノルドの魔力なのに・・・そんなスキル使ってたかしら?
私の斬撃が消えたの・・・?」
そういうと美女は手を頬に充てて思案する。
美しさに見惚れてしまいそうになるものの・・・
だから誰だよそいつ!!という気持ちの方が強かった。
「あの・・・アーノルドさんって本当・・・誰ですか?」
俺は震えるような小声で訪ねてみる。
足がガクガク震えてくるので厄介だ。
「ん~・・・申し訳ないわ。人違いだったようね。
まぁ、この『絶命魔剣』さえあれば“契約”は有効だから・・・もういいわ。」
絶命魔剣・・・ッ!!
異世界のやつらは本当にいちいち殺傷能力が高い!!
そして確実に命を絶ってきそうな名前だな。
「ははは・・・あ~それは良かった・・・ですね。」
俺はもうこの場から消え去りたい気分だった!
そして物凄く適当な相槌は、どうも半自動的に発動した。
何が何だか分からないので、もう本当に勘弁して欲しい。
ていうかそいつはいつも確認の為に殺されかけているのだろうか?
「魔剣、ありがとね。これでじゃあ・・・私は行くから・・・」
そう言うと悪魔は一瞬で消えていった。
・・・これで高鳴る心臓もようやく静まりそうだ。
◇◇◇
「何だったんだ本当に・・・嵐みたいな人だったなぁ。
・・・そういえばアーノルドって誰か知ってるか?グラン。」
「偉大なる先代の魔王様じゃ。儂もお世話になったことがある・・・
転生の秘術もそのお方に授けていただいたのじゃ。」
ああ・・・確かアンデッドになっちゃうヤツ。
絶命魔剣、転生・・・なにか関係あるのかもしれない。
なんて趣味の悪い魔王様なのだろうか。
ただそうしなければグランとも出会え無かっただろうし。
・・・・むむむ、ちょっと複雑だな全く。
「で、さっきの美女はそのアーノルドとかいうヤツを探してたってわけか・・・
怖いよっ!ここのダンジョン!!」
「そうじゃな、剣に憑りつかれた悪魔。
“剣魔”と呼ばれるディア様じゃ。
そして何より剣を使う世にも珍しい悪魔なのじゃ。
一太刀で帝国を壊滅させた・・・という事実がある。
・・・・・信じたく無いだろうが悲しいことに証拠が残っている。」
・・・伝説であって欲しかったものだな。
一太刀で帝国・・・とかめっちゃ最悪だな・・。
なお本当に規模感が半端ないな異世界。
異世界というヤツはパワーバランスが崩れてやがる。
まあ世界が違えば・・・いいのか?
明確な答えは出なかったが、ちょっと今日は疲れたので家に帰って寝よう。
時の流れがいつか解決してくれるはず!
そのときまではどしっ!!と構えていてみようか。
ずっと怠惰でいた俺の心臓は、どうもすぐ怯えてしまうようだし・・・
その日は疲れ切っていて足も竦んだので、グランに渡された紙片に書かれた常田先生の番号に電話でアポをとってからすかさずベッドに転がった。
あのダンジョンいよいよヤバいかも知れない。
普通に考えたらスライムの時点で即死じゃないのか?
月が淡く光ったその夜はいつもより長く感じられた。
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