爺さん無双回

 午前9時の青空の元、賢者ことグランと旧・聖華学園ダンジョン一階層前にて待ち合わせをしていたところ無事グランと再会することができた。


「グラン・・・一昨日、空飛んでなかったよな?

 下世話な深夜番組に取り上げられてたぞ?」


「ギクッ・・・あッ、あれには訳があるのじゃ。空を飛んでいる奴がおったからあとをつけていたのじゃ!!」


 やっぱりお前か・・・

 いや、予感はしてたんだけどね?水晶割っちゃうくらいだし。


「言い訳はいいよ・・・空を飛べる奴なんて賢者ぐらいなんだろうからさ!

 そしてシルエットは一つしかなかったんだからバリバリ嘘じゃん!!」


「いや・・・それは・・・分からんのじゃけど・・・」


 残念ながら賢者の称号は剥奪だなコレは。

 全然賢くないじゃないか。


◇◇◇


 二人で三階層を攻略していく。

 三階層のモンスターはゾンビ達で、これも楽に倒す事ができた。

 流石異世界の賢者は伊達じゃない。

 

「うじゃうじゃ湧いておるのぅ、火魔法『火炎陣フレイム』!」


 そう唱えるとゾンビ達を超高熱でごっそり消滅させる。

 本人曰く、人間だった頃より強くなっているらしい。

 無限につかえる魔力は素晴らしい!出力は流石に無限じゃないらしいが。

 

 ただ、ちょっと最近恐ろしい。

 最初に対峙した時よく殺されなかったな。


「あ、ありがとう。・・・本当に頼りになるよグラン。」


「うむ。儂も力が滾ってしょうがないのじゃ。」

 

 大丈夫か?この爺さん。

 現役なことは素晴らしい限りだが肩に力が入りすぎている。


「キュイッ・・・・」


 ほら、ライムも怯えている。

 凄まじいな。伊達に賢者やってないな・・・コレ。


 この間にもゾンビ達を次々消滅させていく。

 魔石はちゃんと残すようにグランには伝えておいた。

 流石に火力強すぎだからな・・・



「むむむ・・・これは宝箱じゃな!良い効果のあるお宝が入っているのじゃぞ!」

 

 グランが宝箱をパカッと開くと一冊の魔術書が出てきた。

 本の表紙にこんなことが書いてある。


 *******************

 『賢者の魔術書』

 賢者グランが使っていたとされている魔術書。

 様々な魔法が書かれている。

 *******************

 

「これ・・・儂が死ぬとき持ってたヤツじゃな。

 完全に使いまわされておるのう・・・・複雑な気分じゃ。」


「まさかの使いまわしかよ!!余裕ないなダンジョン!」


 知りたくもなかったダンジョンのカツカツの予算事情を知ってしまった。

 もうちょっとロマンあれよ!ダンジョンなんだから。


 グランは元冒険者ということもあって魔物を倒すプロだ。

 俺たちは爆速で三階層を攻略していった。


「さて・・・ボス部屋じゃぞ、キングゾンビめ・・・

 火魔法えっと・・・・『火炎ファイア』じゃ!」


 ゴウッっと燃え上がるキングゾンビ。

 いや毎回思うけど超強いのに魔法の技名すげー雑だな!

 まえ戦った時のファイアーボールもふざけた威力だったなそういえば。

 

 あっという間に魔石が床に転がり、ちょっと爽快感があった。


「そういえば前、魔力反応とか言ってた友人って誰だったの?」


 と、俺はさりげなく聞いてみた。

 

「あぁ、すっかり忘れておったのじゃ・・・歳かのう。

 友人の薬師でツネダという男じゃ。

 ヤツは親譲りの"ちーと"とやらで魔導医学・薬学を極めていた男じゃった・・・

 もしかすれば・・・お主の悩みも解決するかもしれぬぞ。」

 

 ツネダ・・・常田・・・なんか聞いたことある気がするな。

 めっちゃ日本人っぽい名前なんだよなぁ・・・そいつ。


「本当か!なら明日始業式だから・・・今日は探索にしよう。

 けど学校始まったら行くからそん時は案内たのむぞ。グラン!」


「任せるのじゃ!ヤツは病院で働いておるから気軽にいけるのじゃ。」


 いや行けねぇよ!

 常識がないとはこのことだ。

 ・・・ちゃんと予約していこうと固く俺は決心したのだった。

 







 









 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る