査定

「スケルトンの魔石40個とスライムの魔石90個で三万七千円になります。」

 

 順番になったので俺だけで換金をする事にした。

 受付には例の清楚系綺麗なお姉さん。

 そして現金を受け取った。


 そういえば清楚系の定義も曖昧なところが多いなぁ。

 昔はギャルとの対比的な側面があったんだろうが・・・

 今は無茶苦茶に派手なギャルは絶滅に瀕しているようにうかがえる。

 

「魔石、この量凄いですね・・・・どのくらい潜っていらしたんですか?」


 

 こんな美人に魔石の量を褒めてくれるなんていい経験だな。

 単純に人から褒められると少しばかりいい気になったりする。

 

 別に浮き上がる程の事でもないが、人生にこれといった深い人間関係が少ない俺にとってはこの程度の事でもちょっと心が温まったりするのだ。

 

「・・・五日くらい?まぁ、そんなとこですかね・・・」


 これはほぼグランと生み出されたスケルトン達にやってもらい、一日の内に爆速で進んだので盛っておく。

 そんなこと言われたらこの受付嬢だって困って「お前らTUEEE!!!!」ってするしかなくなるだろうからいい迷惑ってやつだしこれでいいのだ。


「それでもすごいですよ!こんな大きさの魔石見たことがありません。

 一体どこのダンジョンに潜っていたんですか?」


「あぁ・・・それはその・・・昔、動物園だったとこの。」


 過疎ってる一人で使える狩場を失うと面倒くさいので、適当なダンジョンを答えておいた。いや昔その動物園行ったことあるからちょっと悲しいな!

 

 ちょっと誤魔化してみたけど・・・どうせ上に報告するんでしょう?

 こういう利権的なのって全く懲り懲りだ。


「動物園・・・ダンジョン・・・あ~あそこのダンジョンですか?こんなに大きな魔石が取れるのなら上にも話を通しておかなくてはなりませんね。」


 やっぱりね!そうだよね!

 まったく、本当に正直に答えなくて良かった。

 ・・・危うく美貌に騙されるとこだったぜ。


「魔物も強くてちょっとヒヤヒヤしました。あそこのダンジョンであんな大きさの魔石がとれるなんて・・・ドロップ品がいいのはとても魅力的ですよね。

 ・・・俺はちょっと待ち合わせに間に合わせたいんでこんなところで。」


 色々聞かれると面倒くさいので早めに切り上げておく。

 今日はダンジョンで疲れたから早く寝たい。

 ・・・って、もう紙とペンを用意している。


「ちょ・・・ちょっと待ってください!

 まだ聞きたいことがっ!!・・・って行っちゃった。はぁ。」


 受付嬢から逃げるように受付を離れると、いつの間にか外にグランが出ていたので合流して家の方向に向かう事にした。


 魔石のこと聞かれたら、"たまたま大きいのがドロップした"の一点張りはどうせ長続きすれば怪しまれる。今のうちにダンジョン協会以外に魔石を売る方法を確保しておこう。

 

 あるいは・・・俺が目立たないように他の人に換金させる方が楽かもしれない。

 パーティを書類上だけでも組んでおけばわざわざ俺が換金しに行く必要もないからめちゃくちゃ便利なシステムだ。


 今後狩るモンスターが増えた時、俺への注目を分散できる。

 ああいった目立ってくれる少年とか秘密主義のやつらでも集めてみてもいいかもしれない。

 

 で、グランが使えるという契約魔法とやらを結んだ経理さえいれば簡単に収入を配分できるし、少なくとも対外的には注目されない。


 ダンジョン協会や国も魔石の取引に関する個人情報を公開すれば大変信用を落とすのでそんな意味のないことはどうせしないだろう。


 こんな誰が力を持ってるかわからない世の中で目立たないに越したことは無い。

 嫉妬や逆恨みだって当然あるだろう。

 特に最近は芸能人、社長更にちょっと名の知れた探索者なんかがスキル持ちのファンやアンチ、嫉妬した他の探索者に狙われる事件をニュースで見たし、対策はやっておいて損はない。


 もちろん自分や家族に危険が及ばないようにする為に。


 というか以前に比べて、力に訴えかけるケースが最近多い。

 俺がそうだったようにこの国もまた原因不明の出来事に悩まされているのだろう。

 ダンジョンは夢や希望でもあるし絶望でもある。


 まったく全てがファンタジーのように上手くいかないから、この世界は怖くて辛いのかも知れないし・・・・ちょっぴり刺激的なのかも知れない。


 

 

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