換金所での一幕
とりあえず、俺の優秀な部下であるスライムの『ライム』とワイトの『グラン』を獲得したダンジョンを出ることにした。
ダンジョンにいるとつい時間を忘れてしまう。
忙しない一日だったが、割と楽しめた。
まぁ、依然として眠かったのだが・・・
とりあえず賢者グランにはライムの『胃袋』に収納させていた緊急時用の着替えを渡した。流石に魔術師のローブでそこら辺を歩かせるわけにはいかないからな。
ライムにはユニークスキル『変幻自在』で小さくなって隠れてもらっている。
「久しぶりの地上だな!大きい建物ばかりで充実しておるのお異世界。」
「キュイっ!!」
小さくなったライムが俺のポケットから顔を出す。
旧・聖華学園のグラウンドをでてから20分ほど歩いてダンジョン協会の千代田区支部に足を運ぶ。
千代田区支部は綺麗なんだよな。
さすがに新設されたわけじゃないけど、広いし大手飲食チェーン店と提携してたりしてモダンな外観になっている。
机と椅子が広い空間に並べられ、飲み食い出来て寛げるスペースだ。
自販機なんかも置かれている。
申請とかは2階でもっと事務的だったんだけど・・・一階は魔石と素材の換金が出来るので財布の紐も緩むんだろう。
換金所の順番待ちで椅子に座りながらウーロン茶を飲み、バーガーを頬張っていると前の順番のパーティの声が聞こえてきた。
「実習中との事ですが一応・・・換金を行う方には・・・ダンジョンから持ち帰られたこの魔力を登録する水晶に触れてもらうことになっているのです。お手数ではありますが申し訳ありません。」
やっぱり実習だったか・・・あの座っている高校生達の集団かな。
ああ、そうっぽいな同じ制服着てるし。
実習は魔物のほぼいないダンジョンに希望制で見学に行けるヤツなのだが一番のメリットはステータスとレベルが手に入ることだな。
プロの探索者に囲っててもらってレベルアップするらしい。
自分の将来を決める助けにもなるし、スキルを使った犯罪から身を守るためにプロの監視下で滅多にないチャンスをもらえるという事で親の同意があれば16歳以上で参加出来るから参加者も後を絶たないらしい。
「随分と綺麗な受付嬢じゃな。
この世界でも受付嬢は美人と相場が決まっておるのかのう?」
「いやぁ、それもどうかな?まぁ・・・こんな時、女性はみんな綺麗と言った方がモテるんだろうけどね・・・事実そう思えないこともあるし。」
「ほぅ、モテを気にするか?お主。儂も若い時は恋仲があったのじゃが・・・アンデッドになっている始末じゃからの。案外気にすることでもないのかもしれんぞ。
ところで・・・あの水晶、儂の世界にもあったヤツじゃな。」
「ん・・・?魔力を測るやつだな。確か冒険者達の魔力の情報登録に必要なヤツで魔力量もわかるんだよな。」
魔力とやらはなんとなくまだダンジョンが解禁されてない家にいる期間から感覚を掴んでいたので、魔力を抑えながらあの測定に臨んだ。
ああやって魔力を登録し、魔石の取引記録をつけている。
例の高校生の一人が返事をしだした。
「僕は全然かまわないよ。みんなもいいよね?」
こいつ・・・ハーレムをこしらえてやがる。
うらやまけしからんやつだぜ。全く。
まぁ、とはいえ・・・人間関係の管理めんどくさそうだけどな。
「わたしも構わないわ
「ええ、いいですよ是非。」
「ん。わたしもいいよ・・・」
この子もまあ可愛いな。
なかなか罪な男って感じだな建人・・・大切にしやがれよ!クソ!
なんて心の中で愚痴るのが好きだったりする俺は所謂メンドクサイ奴って訳だ。
三人称視点のハーレムって結構辛いところがあるが、これが異世界系ラノベにいる主人公を褒めまくるおっさんの心情なのかも知れない。
少年が手を触れた瞬間、
「パリンッ!!」
・・・・と水晶が破裂した。
あらまぁテンプレ少年やってしまったな!
俺達だけじゃなく他の探索者達もざわめきながら一斉に振り向く。
「あれ~?僕、なにかしちゃいました?」
僕、なにかしちゃいました?じゃねーよっ!!
そのドヤ顔なんか腹立つんですけど!
まったく・・・テンプレを地球で見れるなんてラッキーだったな今日は。
「水晶を割るなんて!!どんだけ凄いんですか魔力量!!」
「すげええええ!あんなまだ少年なのに。」
「将来有望だな!!是非パーティに誘いたいものだ。」
「あいつ・・・・ウチのパーティに誘ってもいいかもな、どう思う?」
「いやぁ・・・可愛いですけど絶妙に下卑た顔してません?やめときましょうよ。」
「いや顔関係ないだろ・・・・とにかくとんでもない強さなんだろうきっと。」
「ゴホッ・・・っ・・・・」
誰だよ絶妙に下卑た顔って言ったヤツ。
申し訳ないがちょっと笑っちゃたじゃないか!
ハンバーガーのどに詰まったわ!!
あと最後のヤツ完全になんもわかってないヤツの反応じゃないかっ!!
「ぎゃああああ・・・儂の小さい時を思い出してしまうぅ!!!」
・・・ってかグランさん!顔赤くして手で隠してどうしたんですか?
異世界の賢者ともあろうお方がまさかアレをやったのか?
グランは赤く照った頬を隠そうと必死で机に伏せている。
もうアンデッドなんだろうし過去の事忘れてもいいと思うんだけどな。
爺さんがデレてどうするんだよっ!!
まったく神様はどうも俺をラブコメの主人公にはしてくれないらしい。
そんなこんなで俺は順番を待ちつつ・・・グランにはずっと座ってもらっていた。
グランを水晶に触れさせるわけにはいかないからな。
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