ダンジョン開幕
ダンジョン解禁
あれから早くも一年が経った。
警察や自衛隊が動員され、科学者や研究者も多くダンジョンを捜査したが何かと謎を多く残したままだった。
ダンジョン内には銃や火炎武器の多くを持ち込むことが出来ず、多くが多数の犠牲者を生んだ。どうやら特殊な結界に阻まれてダンジョン内の武器しか使うことが出来なかったらしい。
これらは一部の先走った若者が様々なネットワークを通じて拡散し、噂の対象となったと同時にステータスやスキルといった概念も徐々に浸透していった。
ここ一年、一般人のダンジョンへの立ち入りは許可されていなかったが、ダンジョンの発生件数に対してあまりに対応できる程の職員を擁していなかったため、勝手に許可を得ずダンジョンの中に入るものは多くおり、同時にスキルを使った犯罪も多く起こった。
ダンジョンの力を管理できなかった国は、スキルのデータを個人情報と結び付け、一部の犯罪に対しては効率的に対処する術を見つけた。
日本ダンジョン協会の設立である。
そしてダンジョン産製品はあまり出回っておらず、希少価値を持った。
経済面にも治安の面にも圧力のかかったこの国は先進各国のダンジョン解禁を根拠に、ついに一般人の立ち入りをようやく許可したのである。
日本ダンジョン協会に登録すると迷宮に入ることが出来て、ダンジョン産素材の売却を生業とする探索者といわれる職業になれるそうだ。
日本では既に5万人程が登録し、人気が殺到している。
ふぅ。長かった。
ともかく、ダンジョンに行けるようになった。
俺の高校のグラウンドがダンジョンになってしまったので、転校だのとごちゃごちゃはあったものの高三になり就職か進学の選択に立たされている。
俺の家は、母さんの帰りの遅さからおそらく進学するほどの余裕はないと思われるので就職かな。
「お金のことは気にしないでね、凛。別にお金がない訳じゃなくて・・・
・・・・そのぅ・・・なんて言ったらいいのかしら。
とにかく凛が進学したいなら、学費はちゃんと出せるから!」
母さんにこんな事言われてしまったけど、俺はダンジョンに行く。
スキルも良さげだし、なによりモンスターなんかずっと恐ろしい犯罪を起こす人間達からお母さんや妹を守れるように。
更には・・・
◆『怠惰』:何もせずにレベルがあがる。
また、眷属を作り経験値の1割を納めさせられる。
レベルアップの通知音の頻度はレベルが上昇するにつれて若干は少なくなってきたが、それでも安眠中に起こされるのはあまり気分がよくない。
・・・・特に寝る時間が長い俺にとっては。
そんな俺は長き戦いの末やっと通知を止める方法を思い立った。
ダンジョンに行き、そういうスキルを手に入れるしかない。
『爆睡』や『集中』とかがあったら、レベルアップ通知音を打ち消せる可能性もゼロではない。
あるいは、ダンジョンで手に入れられるとかいう不思議な道具。
安眠系サプリを試してみたのだが、効果がなかったので不思議パワーを打ち消すには不思議パワーしかないのだろう。
今のところステータスはこうなっている。
*******
名前:リン・テンドウ
レベル482
耐性:無し
技能:ユニークスキル『怠惰』
攻撃:4820
生命:4820
魔力:4820
*******
我ながら馬鹿げた数値である。
しかし、レベルアップ音で例え起こされなくても、深夜に起こされる不快さと不安は寝る事が好きな凜にとっては辛かった。
・・・・最近は特に、物を壊してしまうことが多くなった。
料理の練習でフライパンや包丁を握るときも、ベッドにダイブするときもことごとく注意しないと壊してしまうのだ。
・・・ステータスが上がって、だんだん化け物じみてきたかもしれない。
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