第17片
どうやら試験は不合格だったようだ。名前が呼ばれなかった。分析シートというものが渡された。見る気もしなかった。デイドリームは分析シートを持ちながら肩を落とした。(そりゃそうか。)と納得してしまった。
実技試験も面接もダメだったし、筆記試験も自分の中ではうまく行ったが、もっとすごい人なんて山ほどいるに決まってる。(ああ、もうやめとけば良かった。町の人になんて報告しようかな……)とデイドリームはネガティブに考える。
分析シートを見ると、さっきダメ出ししたこと通りの結果が出ていた。
今まで、ポジティブに考えようとしていた余計な力が抜けて、デイドリームは一気にネガティブモードへと突入した。
すると、夢香が前へ向かっていった。そして、リアムの前で立ち止まってこう言った。
「なんで不合格なんですか?教えてくれないと納得できないです!」
夢香が問う。周囲の注目の矢印が夢香とリアムに向く。すると、リアムから周囲が思っていたのとは違う言葉が飛び出した。
「全部ダメだ!だから落とした。文句あるか」
リアムは、威圧に言った。周囲が驚き、ざわめく。試験に落ちて帰ろうとした人も立ち止まり、振り返るほどだった。
夢香はこれ以上何も言えないようだ。涙目で振り返りこちらへ向かって歩いてくる。
僕も帰ろうと思ったが、なぜか勝手に足が夢香の方へ動き出す。なぜかイライラした時のような感覚になる。脳ではない部分を使っているような感覚だ。第2の脳なのだろうか。これが直感ってやつなのか。そんな自分の考えに妙に納得した。
デイドリームは夢香の方へ向かっていく。次に気づいた時は、こう叫んでいた。
「今の言葉、撤回しろ!全部ダメな訳ないんだよ!」
リアムに向かって言う言葉じゃないとわかっているが、第2の脳が制御不能なのだ。
「なんだ。その口の聞き方は。デイドリーム・ココ」
リアムは冷静に言った。もう、オーラには負けない。デイドリームは自分が強くなったという高揚感に包まれる。
「お前が悪いよ。こんな試験受けるんじゃなかった」
デイドリームはそう吐き捨てて、夢香の手を引き会議室を出た。
「おい!ちょっと待て!」
と、リアムの後ろにいた秘書が呼び止めて走り出したがリアムが手を伸ばして止めた。
「え?なんで」
秘書が聞いた。すると、リアムはこう言った。
「いいんだ。気にしない」
リアムは包み込むような包容力のある優しい口調で言った。
デイドリームが出て行った後の会場の人々は言葉を失った。マネキンのように固まった人々は、リアムが動き出すまで固まっていた。
デイドリームは夢香と走って会場を出た。まだ手を握っている。お互いの体温が伝わってくる。夢香は息を切らしながらデイドリームについていく。小さい頃はこうやって2人で走ったこともあった。そんな懐かしさを感じながら、デイドリームはゆめかを連れて走る。
2人は砂浜に着いた。
「そろそろ大丈夫。もう追いかけて来てない」
「そうだね」
夢香は息を切らしながら答えた。2人は追いかけてくると思い込んでいるようだ。
少し沈黙が流れたが、いつものような気まずい沈黙ではない。
浜風が2人に吹き付ける。
快晴の空とはまた違う、海に沈んでいく夕焼けの空を見上げる。夢香はオレンジ色に染まりながら微笑んだ。もうあの頃の僕らじゃない。そして、夢香は何かを思いついたように口を開いた。
「ねぇ、私たちが世界を救おうよ!」
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