第46話 vs黒崎
黒崎が地面を蹴ったのと同時に俺も地面を蹴る。
繰り出してきた拳に合わせて、カウンターで拳を鼻に入れる。
「て、てめぇ……」
黒崎は鼻血をタレならしながら、俺を睨んでいる。
「どうしたんだ、折檻するとか言ってたけど? 逆に俺がクソみたいな性格のお前を教育してやるよ」
無理して作り笑いを浮かべながら俺は言う。
「まぐれ当たりが調子に乗るんじゃねえ!!」
黒崎は激昂して俺に殴りかかってくる。
大丈夫だ。黒崎の動きはすべてスローモーションのように感じる。
俺は黒崎の攻撃をすべてジャブで迎撃する。
黒崎の顔のあざが増えていく。
「ん、な? ぐっ、いてっ、あぁ?」
黒崎は遂に尻もちをついて倒れる。
黒崎への不安と恐怖がすーっと霧散していくのが分かる。
大丈夫だ、俺は黒崎に負けてない!
不安と恐怖などその程度で所詮は幻想なのだ。
黒崎の俺に対する目がここから変わった。
「てめぇ、ほんとに異世界に来て強くなったのかよ…………」
「だから言ってるだろ。で、体で分からせる…………だったっけ? 」
「…………ぎゃあああ!!」
俺は黒崎の足を蹴り上げてへし折った。
「だからぼけっとしてんなよ。今、戦闘中だぞ?」
「くそぉ!! 無能野郎がよ!! こんなことなら最初から剣でやっときゃ……」
「言い訳か? ほら、お前は俺に絶対に勝てないって分からせてやるよ……」
俺は治癒魔法を使って黒崎を回復させる。
黒崎の全てを出し切らせて上回るのだ。
「…………馬鹿が敵に塩を送るような真似しやがって!」
黒崎は背負っていた片刃の大剣を抜く。
抜いただけでその禍々しさが伝わってくる。
俺もそれに併せて
「俺のスキルを忘れたのか? 剣聖を舐めたことを後悔させてやるぜ!!」
黒崎は横薙ぎに大剣を振るうが俺は
が、俺は油断していて、黒崎のあまりの膂力にぶっ飛ばされる。
「は!?」
「ははは、どうだぁ!! 反撃はこれからだぁ!」
おかしい、なんだこの力は?
黒崎はレベル100は超えているがこの力はそのレベルでは、でないだろう。
…………もしかして、この大剣の力か?
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名称:ディスカリバー
等級:幻想級
ディスカリバーは死と破壊を司る片刃の大剣。
片刃の刀身に刻まれた禍々しい紋様には、古の邪神の言葉で綴られた破壊の呪文が刻まれている。
ディスカリバーは、それを手にした者の力を飛躍的に高めるが、同時に禍々しい力で持ち主を蝕んでいく。
その力に魅入られた者は、やがて自我を失い、邪神の意志に支配されるとも言われている。
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幻想級だと?
前に俺の
じゃあ、それに近い性能の武器ってことか?
「どうだよ、ディスカリバーの威力はよ? 剣ごと叩き斬ってやろうと思ってたんだが、無能がよく防いだな?」
「はあ? さっきまで鼻血垂れ流して泣いてたやつが、何を偉そうに言ってるんだよ!」
「うるせぇ泣いてねえ! 減らず口叩きやがって、てめぇ、後悔させてやる!!」
黒崎は目を血走らせてディスカリバーを振り上げ、俺に向かって全力で振り下ろす。
ズシンと辺りに地響きが発生する。
今度は少し力を入れて防いだ。
「んなぁ? 俺の全力の一撃を防いだだと…………」
「あれ? 今のが全力なのか。俺、まだ半分も力出してないんだけど。ほら、力入れてみろよ!」
鍔迫り合いの状態で煽る。
「ああ!? くそがぁあああああああ!!!」
黒崎は顔を真っ赤にしながら大剣を通して、俺に圧力をかけようとする。
だけど俺にとってそれは、小さな子供から力を込めて押されてるくらいの感覚だった。
「ほら!」
「うぉ!? ぐぁあ!!」
少し力を入れると黒崎は吹っ飛んで壁に衝突した。
「ありえねえ、ありえねえぞ…………無能の小日向如きがよ……」
「現実だから認めろよ。力で勝てないのは分かったか? 後は剣技だな。ほら、必殺技とかないのか? 剣聖様のさ」
その時、黒崎の目つきと空気が変わった。
「…………なぶろうと思ってたけど、考えを改めるわ。てめぇは俺の全力を持ってぶち殺す!!」
「そうそう、その調子だよ」
「気に入らねえなあ!! その余裕かました調子がよお!! 見せてやるよ、ディスカリバーを使った俺の本気およう!!」
黒崎が漆黒の大剣を構えると、辺りの空気が凍りつくように冷え、暗黒のオーラが渦巻き始める。
『闇の彼方より、我に力を。全てを無に還せ、ディスカリバー!!』
禍々しい詠唱と共に、黒崎の周囲に漆黒の闇が集束する。
ディスカリバーが不気味な紫の光を放ち、現実の境界が揺らぎ始める。
そして、黒崎が大剣を振り抜くと同時に黒き
一閃。
黒崎の剣撃波に併せて、
「ば、ば…………馬鹿な。俺の全力の一撃を……無能の小日向が……ありえねえ、ありえねえぞ…………」
黒崎が夢遊病のように呟く。
「そうだ、無能の力を見せてやるよ。お前のその自慢のディスカバリーでな」
「な、何を……?」
俺はディスカバリーに向かって手をかざす。
無。
そう念じるとディスカバリーの刀身は消え去り、黒崎の手に柄だけが残った。
「…………」
黒崎はあまりの衝撃に固まって呆然と柄を見つめる。
「…………はあ!? 一体、何しやがった?」
「俺の無能スキルは文字通りのスキルだったんだよ」
「じゃあ、なんで俺を上回れ……」
「文字通り、全てを無に化すスキルだったんだ」
遂に黒崎の俺を見る目が恐怖に染まった。
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