第4話
休憩を終えた僕らは次の部屋に進む。
さっきの部屋を出たら短い通路を挟んですぐに次の部屋があった。
そこでは、床に描かれた巨大な魔法陣が彼らを待ち受けていた。
「ここにはあまりヒントになるようなものは書いてないわね」
「そうみたいだね。特に石碑とかもない……」
僕はそう言いながら、部屋の周りを慎重に観察した。
床の大きな魔法陣の中には様々なシンボルが彫り込まれていた。
「リリア、このシンボルが鍵になるんじゃないか?」
よくわかんないけども……。
リリアは魔法陣とシンボルを交互に見ながら考えている……。
「これは星座かも……」
「星座?あぁ、なるほど。壁一面が夜空で、描いてあるのが星座なのか」
「そうみたいね。でもどういう事だろう。こんなところに描いてあるということはなにがしかの意味はあるのかな?」
「……」
まったくわからん。
自然の調和の次が夜空……。
「魔法陣だけで意味を探るのはなかなか難しいんだけど……」
それでもリリアは考え続けてる。
魔法陣となっている床の夜空と星座……。
星座なんてあんまりわかんないぞ?
……みんなそうだよね?えっ?わかる人いる?
くそっ。僕は占いで使うものくらいしかわからない。
えっ?どんな星座かって?
例えば今月の星座である剣の星座は明るい6つの星からなる星座で4つのほぼ直線に並んだ星と、それと直角に交わる2つの星とがちょうど剣のような形で交わってる星座だ。
ほら、ここにあるのがそれだよ。
えっ?見えないって?
これだよ……。
「エド、なにを?」
「あっ……」
剣の星座のあたり押してしまうと……そこが凹んだ。
「ぎゃー」
「エド!ヒール!」
そして僕は電撃を食らった。
リリアがすぐに直してくれるし、そんなに強い電撃じゃなかったからいいけど、なんなんだ。
「星座が押せる……?」
「そして電撃を食らう……」
「もうエド、笑わせないで」
「いやその……」
笑わないで。結構痛かったし、びっくりしたんだから。
「そうよエド。これは夜空。そして星座が描いてある。正しい順番に押していけば扉が開くとかじゃないかな?」
「なるほど!」
さすがリリアだ。
「電撃だけなのかな?触るたびに……例えば燃やされるとか嫌なんだけど」
「押すのはお願いね、エド」
くそう、かわいい。
……アホとか言わないで。
そうだよ、ミスしなきゃいいんだ。
「もちろんだよリリア!でも、順番は……。そっか、干支か!」
「そうね。とりあえずそれよね」
この世界では月と星座が紐づけられていて、ある月が剣の月だとすると、次は弓の月だ。
そのあと、竜・杯・塔・環・馬・印・鳳・樹・冠・盾と続く。
12年で一周だ。
この床にはちゃんと12個の星座がある。
それ以外にも星座が描いてあるが、正しいものだけ押せばいいんだろう。
「じゃあ、押していくよ!」
「お願いね、エド」
僕は順番に押して……。
いや、ちょっと待って。
最初はどれなんだろう。
さっき剣の星座を触って電撃を受けたんだから、きっと最初に押すのはこれじゃないんだろう。
年初めの樹の星座かな?
「どうしたの?エド?」
「いや、最初はどれなんだろうと思って。さっき触った剣の星座じゃないことはわかるんだけど」
「あぁ、そういうことね。それなら最初は樹のはずよ」
「樹?」
いとも簡単に答えるリリア。
押してみると特に電撃を食らうことはなかった。
むしろ壁画全体が少し明るくなった。
リリアによると、樹は単に1月の星座だから最初なんじゃなくて、樹は新たな生命の始まりと成長のシンボルだから1月に割り当てられたらしい。
さすが神官見習い……博学だ。
そして僕は襦袢に星座を押していく。
樹の次は冠、そして盾、剣、弓……。
おぉ、順調だ。
押すたびにその星座が沈み、床全体が明るくなる。
次の星座が遠いので僕は立ち上がって全体を見ると、とても明るく幻想的だった。
「綺麗だね、リリア」
「えぇ、エド、ほんとうに」
君のことだけどね……。
ごめんなさい。ふざけました。
声に出てなかったよね……。
「どうしたの、エド?」
「あ……あぁ、なんでもないよ。ちょっと見とれてただけ」
君に……なんでもないです。
次は竜だ。
僕は竜の星座のある場所に行って、しゃがんで星座の部分を押す。
「ぎゃーーーーー」
「えっ?エド?なんで?」
結構強い電撃……ガクッ。
「あぁ、エド。ヒール!」
突然の電撃に驚いていたリリアだったが、僕が倒れたのに気付いて回復魔法をかけてくれる。
助かった……。
「どうして?順番は間違いないはずなのに」
リリアが呟いている。
だよね、僕もそう思う。なんで竜じゃダメなんだ?
「星座なんて昔から一緒のはずなのに……」
「あっ!?」
「どうかした?なにかわかったの?」
僕の呟きに反応したリリアは、なにか思い当たるものがあるようだ。
「この遺跡は古代の遺跡よね」
「そうだね。それはそうだと思う」
「ということはね、エド。違ったのよ」
「ん?」
なにが?
「もう、エド。星座よ。昔は星座が違ったの」
「そうなの?」
初耳だ……。
「昔はね、龍だったのよ」
「ん?」
竜って言ったよね?どうしたリリア?一緒じゃん。
「ん?」
「ん?」
あれ?なに?なんか変?
「えーと、リリア。竜でしょ?」
「いや、違うのよ。龍よ、龍。竜族の竜じゃなくて、神獣の方の龍なのよ」
「あぁ、そういうことか」
やっとわかった。
読みが一緒なのが紛らわしいけど、龍の星座は竜の星座とは違う。
位置すら違う。
昔は……まだ龍が活動していた時代、それから遠くない時代では龍の星座だったという話は聞いたことがある。
……思い出せよとか言われても……。
「そうと分かれば押してみよう」
「待って、エド。また最初からだと思う」
「あぁ、そっか。光も消えてるしね」
「そうね。全部エドに降り注いだように見えた……から」
それで威力が上がってたのか!
ちょっと待ってよ?もうないよな?
最後まで行って全部食らったら結構痛いというか気絶くらいしてしまいそうなんだけども……。
「どうしたの?エド?」
「えぇとね。もうないよね?昔と今で違う星座」
「ないわ。それは断言できる。変わったのは龍と竜だけよ」
「そっか」
それなら安心だ。
僕はまた樹の星座から順番に押していく。
龍の星座を押すときは緊張したけど電撃を食らうことはなかった。
なんかこれ罰ゲームみたいな試練だよね……。
そのあと、杯、塔、環、馬、印、と順番に星座を押して行った。
どんどん明るくなる。
沈んだ星座も色とりどりの光を放つようになっていて、とっても幻想的だ。
そして、あとは鳳の星座だけだ。
なにが起こるんだろう。
緊張の中、最後のシンボルを押すと、光が浮き上がり、それが壁に向かって進んでいく。
壁には扉が浮かび上がり、光の進みに合わせるようにゆっくりと開く。
そして光は部屋を出ていった。
ここにはゴーレムは出てこないのか……。
パァンと音がした。
光が弾けたみたいだ。
ここからだと一瞬扉の向こうが明るくなって、そして消えた。
「扉が開いたわね、行ってみましょう」
「あぁ、リリア!」
僕はリリアの前に立って扉を出る。
現れた通路を歩いていくと、石像が僕らの前に立ちはだかった。
馬に乗った騎士の形をしている石像だ。
十中八九モンスターだろう。ストーンナイトかな?
少しずつ動いているように見える。
これにさっきの光が当たったのかな?
僕は直ぐに剣を構え、リリアも魔法で準備を整えた。
「リリア、後ろにいてくれ!」
「わかった、でも……慎重にいきましょう!」
そしてその石像は巨大な剣を振り下ろしてきた。
「気をつけてエド!」
リリアが叫ぶ。彼女の声に促され、僕はぎりぎりのところでその一撃をかわした。
その剣から放たれる圧力は、まるで岩石が落ちてくるような重さだった。
「リリア、ちょっと距離を取って!ストーンナイトだ!」
僕は彼女に指示を出し、自分は剣を構えて再びストーンナイトに挑んだ。
リリアは少し離れた場所から、僕に向かって両手を伸ばす。
「ブースト!クイック!」
彼女の声が響き渡り、僕の体が軽くなったのを感じた。
力と速さが増したおかげで、ストーンナイトの次の攻撃をよけるのが以前よりもずっと容易になった。
ストーンナイトとの攻防は激しかった。
その巨大な剣と僕の剣がぶつかり合い、火花を散らす。
しかし、リリアの魔法のおかげもあり、僕はその一撃一撃に対応し、反撃のチャンスをうかがった。
「エド、今よ!ウインドカッター!!!」
リリアの声が響く。
「スラッシュ!!!」
彼女が放つ風の刃がストーンナイトを襲い、その隙をついて、僕は剣技を繰り出した。
僕らの攻撃が重なり合い、ストーンナイトの堅い体を貫いた。
そして、ストーンナイトは重い音を立てながら崩れ落ちた。
地面には鍵が落ちている。
僕はそれを拾い上げ、リリアの方を向いた。
「リリア、大丈夫か?」
彼女は微笑みを浮かべて答えてくれる。
「大丈夫よ、エドのおかげ。この鍵できっと先に進めるわね。」
僕たちはその鍵を手に、再び冒険を続けるために前に進む。
ストーンナイトの戦いは、僕たちの絆と力を再確認させてくれた瞬間だった。
順調に遺跡を探検していく2人。謎を解き、敵を倒し、自信を深めながら進んでいく。
その先に待っているものへの期待を膨らませながら……。
っとその前に。
そろそろ外は夜。寝るのも探検のうちだよね……。
ということで、僕とリリアは持ってきた収納袋から食料と水を出して補給を行い、テントで休み、この先の探検に備えた。
探検ってなんて楽しいんだ。
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