第7話っえ、金持ちじゃない? あの宣言は
「へぇ〜、そうかもしれないですね」
スマホをひっくり返し、見やすいように突きつけた画面。
けれど、苺谷は嫉妬や落胆する表情を見せるわけでもなく、なぜか目を細めて嬉しそうに微笑を浮かべてきた。
「先輩って、本当は金持ちだったりしますよね?」
それを指摘して聞こうとした矢先……甘い香りと一緒に耳元でボソッと告げられる。
金持ち?
金どころか、家も住むところもない一文無しに近い状況だってのに、何を言ってんだろう。
「俺はホームレスと良い勝負をする資金力しかないぞ」
「またまたー、それなら先輩が馬鹿でぇ。私がただの馬鹿に引っかかった事になっちゃうじゃないですか⭐︎」
ペロッと舌を出した苺谷に、無言で冷たい視線を返す。
その表情は最初こそ明るかったが、
「っぇ…………そんな、そんなわけ」
徐々に硬くなり、声のトーンも聞いたことないほど低くなる。
「それじゃ……あの、敷地内で馬鹿みたいに叫んでたのは、正体を知ったら女の子が群がるミステリアスな男とかって訳じゃなくて?」
半笑いをしながら、所々肩を震わせ、何回も壊れた玩具のように息を吹き出す苺谷。
あぁ、恥っずぃな……あれで変な勘違いしたのか、思い出してみればその後すぐ突進してきたな。
「多分、俺の正体を知ると距離を取る人の方が多いんじゃないか?」
照れくさくなって熱くなる頬、照れ隠しに鼻の下をこすりながら照れたように答え。
そんな俺の顔を一目見ると彼女は無言でしゃがみ込み、顔を抱えて塞ぎ込み始めた。
「ま、そんな事もあるよ。次からはよくよく調べてから媚を売る事だな」
「はあ、ッはぁ? なんなんですか、じゃあの色仕掛けが全部パァ? 私はただの馬鹿に捕まったってこと?」
打って変わって聞こえていないと思っているのか、ぶつぶつと悪口をこぼす。
予想通りにイラついている、流石に鼻を擦るのは馬鹿っぽすぎたかもしれないと思ったけど、ちょうど良かったか。
待てよ……つまり、俺はそんなアホっぽい行動をとってもおかしくないと思われたってこと?
少し心外だな。
「全部聞こえているぞ」
そう小言をいうと、パッと彼女は顔を上げ、見慣れたニコニコした笑顔を向けてくる。
けれど、なにを話せばいいのか分からない様子で目を泳がせ……諦めたように「ハァ」とため息をつく。
「あのー、さっき生徒会長がヒロインって冗談でしょう? 先輩じゃ無理ですよ、格が違います。
高嶺の花は現実味がないからヒロインになんてならないし、自分に釣り合わないことぐらい分からないんですか。
っあ、もしかしてVtuberと結婚できるとでも思っているガチ恋勢だったりするんですか?
しそうですもんね。そんな感じが話しているだけで、どんどん伝わってきますもん。
いや、現実見た方がいいでしょう?
私はもう先輩に過剰レベルでサービスしたんですよ? 次の賭けの日は私の好きな人を調べますよね? 調べたくてたまらないですよね? 気になってますよね? 気になってないと可笑しいですよ?」
そして吸い込まれそうなほど暗い瞳に、口角と眉をピクつかせ、全部吐き出してきた。
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