第4話ログインボーナス四日目
どう話を切り出せばいいのか。きっと不安が表情に現れていたのだろう口を開いたのは峰のほうだった。
「ご主人様ここはいずこなのでしょう。みれば天井が光っておりますし床も一面板張りでございます」
「その、さ――」
口だけごにょごにょ動いてみっともないことこの上ない。
一度深く深呼吸をし「ちょっと来て」と再び峰を寝室に呼ぶ。
「正直なところ俺もさ今この状況を呑み切れてないんだ」
そういいながらノートパソコンを立ち上げる。
峰が登場していたソシャゲは江戸時代篇の終了をもってホームページが観覧できなくなっている。
そこで自分はエクスプローラーを開きスクショと書かれたフォルダをクリックした。
ずらっと表示される季節イベやメインストーリーに思わず頬が緩むが今はそんな状況ではない。
左上。すなわち一番最初に保存した画像をクリックし傍らでじっと表情を変えずにいる峰と場所を変わる。
「――これは、わたくしでございますか?」
クリックした画像は峰の全身画。
自身がゲームをはじめるきっかけになったのがこの全身画で、あるときネットの広告スペースに表示されたこの全身画をみて速攻で事前登録をしに行ったのを覚えている。
「なるほど、わかりました」
得心がいったという表情で峰がこちらを見る。
「わかったてなにが?もしかしてなにか思いだした?」
「思い出すようなことは何も。ただここがいずこはわかりました、地獄なのですね」
悟ったような峰に対して気の抜けた声を上げてしまう。
「え?地獄?」
「黄泉比良坂に足を運ぶ機会があれどその奥には行ったことがございませんでした。まさかこのような住みやすい場所があるなんて。先ほどの急須も付喪神になれずとも魂はご主人様の元に下ってきたのでしょう」
なにかとんでもない解釈をしている。というよりもどうしてそうなった。
「ただ、まさかご主人様がそのような若い姿で果てるなど。病にしろ懐刀を名乗っておきながら面目ございません」
ついには死人扱いとなってしまった。
「とりあえず落ち着こうか」
自身にも言い聞かせるように峰に言う。
「えっと、どうしてここが地獄だと思ったの?」
「今ご主人様が動かされたその箱、それは浄玻璃鏡と同じものではないのですか?」
「浄玻璃鏡てなんだっけ。閻魔様が持っている鏡だっけ?」
はい。と峰がうなずく。
「いや、違うから」と身振りも合わせて否定した。
再び峰と場所を変わる。変わったのはいいがなにから説明する?
パソコンの説明?現代について?いや説明しなきゃいけないことはわかっていた。
「こんなことを言われたら戸惑うかもしれないけど峰、君はゲームのキャラクターなんだ」
「キャラクター、ですか」
峰は小さな声で呟き返した。
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