第2話ログインボーナス二日目
頭が痛い。はじめて酒を飲んだ次の日のことを思い出す。
どうにか腕に力を入れ起き上がり時計を見ると九時を過ぎていた。
今日は仕事が休みだからいいがこんなに寝たのはいつぶりだろう。
早寝早起きを心掛けているわけではない朝はなるべく早く起きてゲームをやる時間に当てたいだけ。
「にしても変な夢だったな」
夢にしてはあの子が握った感覚がまだある。
――約束。
思い返すとやはり昨日のことが現実に思えてくる。
いやいや、ないない。自問自答しながらボサボサの髪を掻きむしった。
とりあえずと掛布団をめくるが手繰り寄せられるように手元の方へ掛布団が動く。
なんどやっても同じこと。まるで親に掛布団をひっぺがえされたときの挙動。
不気味、というよりも今この場に妙な違和感を覚える。
ちらりと隣に目をやった。
艶やかな黒髪で短髪の女性がすぅ。と寝息をたてている。
起こさないようにそっと布団から出ると柱に向かって頭を打ち付けた。
「え?どういうこと?なんで俺の布団に?いや、俺の家、俺の布団だよな?」
部屋を見渡す。確かに自分の家に布団だ。
視線を女性の方へと向ける。
「――思い出せない。おい、昨日の俺、一体何をやったんだ」
再び柱に頭をぶつけるもなにも思い出せない。
「と、とりあえず家をでよう。もしかしたら家を間違えたのかもしれない。それか怪我かなにかで泊めたのかもしれない。そうだよな俺、やましいことなんてしてないよな俺!」
思わず声を張ってしまった。
「んぅ――」
女性が声を上げる。
やばいとそそくさに部屋を出ようとドアノブに手を伸ばす。
「――おはようございます、ご主人様」
ビクリと体を振るわせ後ろを振り返るとまだ寝惚け眼で女性がこちらを見ている。
驚くことに和服で寝ていたようで着崩れて肩から胸元までの柔らかとそれでいて肉付きのいい肌が露出してしまっていた。
エロス、というよりはどこか艶めかしく黒髪と相まって出来のいい人形のよう。
「どうかしましたかご主人様」
「え?あ、いや。ねえキミ家を間違えてない?」
女性が部屋を見渡す。
「ここはご主人様の家、なればわたくしの居場所も自ずとここに。懐刀としていつまでも、そうお伝えしたはずです」
――ん?今の言葉。
女性は丁寧に掛布団を畳むと一挙一動丁寧に立ち上がり腰に刀を差す。
黒い和装。それにさっきの言葉。なによりその刀。
「――もしかして鴉刃峰?」
「はい、ご主人様の懐刀。鴉刃峰です」
凛とした表情で女性はそういった。
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