第15話 ひとりごと

フィルは倒れこんでしまった。

そんなに強く叩いたわけではないはずだけど。

そういえば何も食べていないと言ってなかったっけ?


起きなかったらどうしよう。

大きな不安が私を襲った。


「「ねえ、起きてよ!お願いだから!!」」


私はフィルを揺さぶった。

瞳から、涙が溢れ出ていた。

ぽたっとフィルの顔にかかる。


「雨?」


うっすらと目を開けるフィル。


「レイシア、何で泣いてるの?」


「え?だって、死んじゃうかと思ったから・・」


「大げさだなぁ・・僕、最近食べてなくて気を失ったみたいだ」


私はホッとした。


「何かスープ作るわね。ちょっと待ってて」


何も食べていないとか・・いったいどうしたのだろう?

具合が悪かったのかな?

取り合えず、ある具材を切って適当に鍋に放り込んだ。

食べてくれるわよね?



****



僕は何日かぶりの食事をした。

温かいスープに心も温まった気がする。


「どう?食べれそう?」


レイシアが心配そうに聞いてきた。


「うん。美味しいよ。食べてるし」


「そっか」


スプーンをすくって口に運ぶ。

具材がだいぶ細かく切られているみたいだ。

食べやすくしてくれたのかな?

窓辺でスラリンがぷるぷると震えていた。


「僕って本当にレイシアの事好きなんだなぁ」


僕は、ぽつりと呟いた。

小さい声で。


「え?何か言った?」


レイシアは洗い物をしていて、耳に入っていないようだ。

もちろん聞こえないように言ったのだけど。


『好きレイシア』


スラリンが僕のセリフを繰り返した。


ぶっ!ゴホゴホ・・。


僕は思わず、むせ返してしまった。


「え?ちょっと大丈夫?」


食べていたスープを口から出してしまった。

あ~びっくりした。

スラリンが僕のセリフを言うと思わなかったよ。

レイシアにはスラリンの言葉が聞こえてないから大丈夫だよね。


『ご飯食べたい』


スラリンも食べたいみたいだ。

スープ食べられるのかな?


「レイシア、スラリンの分もある?」


「え?少しなら残ってるわよ」


レイシアはお皿に残りのスープをすくって床に置いた。


『おいしい~』


「よかったな」


スラリンって何でも食べるんだな。



****



今、何だかとんでもない事を聞いてしまったような・・。

私はゼリューヌさんとの契約で、色々パワーアップしているみたいで。

聞くつもりなかったんだけど、フィルの独り言が聞こえてしまった。

スラリンの声も聞こえている。

私の事好きって言った?

言ってたわよね?


知らないふりをしていた方がいいのだろうけど・・。

そんなこと聞くと意識しちゃうよ。

私は深呼吸をして、気持ちを落ち着かせた。

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