第14話 帰宅
深淵の森、私はゼリューヌさんの家に来ていた。
私はゼリューヌさんとある契約をしている為、霧の中を迷わずに歩けるようになった。
「今回は助かったわ。返すわね」
「レイシアの役に立てたようでなによりじゃ、オホホ・・」
私はゼリューヌさんに借りた鏡を返す。
「今日はスライム坊やは来てないんだねぇ」
「スライム坊やって・・まぁかわいいけども」
「気を付けて行きなよ、あの坊やの所へ行くのかい?」
「まあ、行くところもないしね」
この前、永遠に会えないみたいな事言っちゃったな。
ま、いっか。
****
「フィル~、おーい」
わたしはフィルが心配でフィルの家に来た。
案の定、何も食べていないようだ。
今日もぼーっとしている。
「あっ!猫!」
「えっ?どこどこ?」
フィルは猫の言葉を聞いて、気が付いたみたいだ。
「ご飯食べなきゃだめでしょ?」
「リナいたんだ・・ああ、うん。だってお腹空いてないし、食べるのめんどいし」
わたしはバケットをテーブルに置いた。
パンがいくつか入っている。
「持ってきてあげたから、食べなよね?食べないと元気出ないよ?」
「・・ああ」
もうあれから三日経つ。
気持ちは分かるけど・・。
「にゃ~ん」
何処かで聞いた声が聞こえた。
わたしとフィルはドアの方を見る。
そこには、苦笑いをした銀色の髪をした女性が立っていた。
「ただいま。戻って来ちゃった」
フィルはレイシアに駆け寄って抱きついた。
「あらあら、私がいなくて寂しかったの?」
「・・うん」
フィルは、しばらくレイシアに抱きついていた。
「フィルは任せたわ。彼、ご飯食べてないからよろしく」
短い言葉をかけ、わたしはフィルの家を出た。
世の中は上手くいかないものなんだよね。
顔を見るのも辛くなって家に逃げ帰る。
「こういう時のカンって当たるのよね・・」
わたしは、自室のベッドで顔をうずめていた。
明日になったら、元気にフィルに会いに行こう。
何でもないって顔をして。
きっとフィルは元気になっているだろうから。
**
「ご飯食べてないって?どうしたの・・」
「ああ、なんでもないよ」
僕はレイシアの顔を見た。
彼女が戻ってきたことが、信じられなかった。
恋人がいるって聞いていたからだ。
「えと、村に戻ったんじゃなかったの?」
「ん~行ったんだけどねぇ。まあ色々あってさ。戻って来ちゃった」
舌をペロッと出すレイシア。
めちゃくちゃ可愛い。
「レイシアって僕より大人っぽいのに時々可愛いよね」
「な・・」
レイシアの頬が赤くなる。
「そんな事言っても何にも出ないわよ~」
ポカっと軽く頭を叩かれる。
クラっと体が揺れた。
そのまま僕は気が遠くなる。
そういえば、何も食べてなかったっけ。
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