第13話 自業自得

「はぁ~」


家に戻ってきて、僕は気が抜けていた。


「ちょっと!大丈夫なの?」


リナが声をかけているけど、何だか遠くに聞こえる。


「あんたさぁ、もしかしてレイシアさんの事好きだったの?」


僕は無言でうなずいた。


「何で言わなかったのよ~。ほんとバカみたい」


リナが、何故か悲し気な表情をしている。


「そうか・・彼女恋人がいるって言ってたもんね。そっか・・」


リナが指で、まぶたをこすった。


「ま、まあしょうがないじゃない。そのうち良い事あるって。ほらスラリンが不思議そうに見てるよ?」


横を見るとスラリンが僕を見ていた。


『元気ない?』


「ああ、心配かけてごめんな。大丈夫だから。少しぼーっとしただけ」


スラリンにも心配をかけてしまった。


「わたし仕事してくるけど、何かあったらすぐ来てね?」


リナは仕事に戻るみたいだ。

家で怪我などを治すお仕事をしている。

主に患者は冒険者が多いらしい。

今日は流石に仕事をする気にはなれない。

僕は、家でぼーっとしていることにした。



****



私はマノリ村に戻っていた。


「あれ?レイシアじゃないか」


畑仕事をしている、マルクさんに声をかけられた。

50代の近所の男性で、よくお世話になった人だった。


「今まで、どうしてたんだ?アーロンは知らない女と結婚しちまったぞ?」


「・・そうだったんですね」


不思議と悲しくは無かった。

水晶で確認していたからだろうか。


「美人なんだけど、な~んか怪しい女なんだよな。気味が悪くて、あまり近づかないようにしているんだが・・」


「そう」


別にここにとどまる必要はないか。

実家があるわけでもないし。

アーロンは幸せ?に暮らしているのだろうし。

私は元来た道を戻ろうと、振り向いたその時。


「まさか、戻ってくるとわね~。また呪いをかけてあげようかしら」


灰色のフードを被った、茶色い髪のラズベルが現れた。

灰色の瞳の奥はギラギラしている。

会いたくなかったけど。


「うげっ」


「何その嫌そうな顔は。まあいいわ、またかけてあげるから」


ラズベルは、マルクさんが見ているにも関わらず詠唱を始めた。

どうやら時間のかかる魔法らしい。

魔法陣が現れる。

私はとっさに鏡を魔法陣に向けた。


「そんなもので防げると思ってるの?アハハばっかみたい」


高笑いをするラズベル。

魔法は私の方へ向かって放たれる。


バン!


花火のような、まばゆい光が辺りを包んだ。


「まったく、こりもしないわね。いいかげんに・・ってあれ?」


ラズベルは違和感を覚えた。

自分の着ていた服が地面に落ちていた。


「どう?自分が猫になった気分は?」


「「いやあぁぁぁぁ・・・・」」


「嘘よ、嘘だと言ってちょうだい」


ラズベルは茶色の猫へ変わっていた。


「これはね、ある人から借りた魔法を反射する鏡なの。ほんと、いろんな物もってるわよね~」


「ち・・ちょっと待ちなさい。わたくしを元に戻せるんでしょう?」


「何で戻さないといけないの?」


「だってわたくしは・・アーロンと結婚してるんだから・・」


「そう、みたいね。じゃあね~」


私はラズベルに手を振った。

自業自得だわ。

元に戻る方法は勝手に探せばいい。

アーロンが不憫ふびんに思えたけど、気にしてもしょうがないわよね。



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