第9話 深淵の森1

「準備はこんなものでいいかな?」


家でリュックに食料と水と詰め込んでいく。

今回はレイシアがお金を出してくれて準備が出来た。

武器とか普段買えないような物まで揃えてくれた。

私の為だからいいのよって言ってくれたけど。


バタン!


「ちょっと!深淵の森行くって本当なの?」


「ドアは乱暴に開けないでくれ・・壊れたら困る」


「あっ、ごめん」


何処から聞いてきたのか、リナが血相変えてやってきた。

ギルドで聞いていたから、行くことを知られたのかもしれない。


「行くのは本当だよ」


「わたしも行く!」


「「えええ??」」


「あっ」


レイシアが前足で口をふさいだ。

もう遅いと思うけど。


「今、猫喋った?」


にゃ~ん

わざとらしく鳴くレイシア。


「今喋ったよね?何か最近変な感じするって思ってたんだ。言ってくれればよかったのに」


リナがぷくっとむくれていた。


「そうは言っても、ほら怖がる人が多いって言ってたから・・」


「えっと、危険なので一緒に行くの止めたほうが良いですよ?」


「わたしは回復魔法使えるから、怪我したとき役に立つから大丈夫なの!」


何故かリナも、一緒に行くことになってしまった。



****



僕と、レイシアとリナは森の入口に来ていた。

子供二人と、猫一匹。

ああ、忘れてた。

スラリンも一緒。


スラリンは右肩に乗っかっている。

レイシアも肩に乗りたがっていたが、重いしバランス悪くなるので断った。

何で乗りたくなるのだろう?

猫だから?

レイシアって人間だよな?


「一応言っておくけど、この森に入ると魔力が無くなるって噂があるらしいよ。それと毎年、行方不明になる人もいるんだってさ」


「へ、へえ~」


リナの杖を持つ手が震えている。


「大丈夫?戻るんだったら、今だよ?」


「だ、大丈夫だもん」


僕たちは森の中を歩き始めた。

霧が思っていたよりも濃いな。

方向感覚が分からなくなるのかもしれない。


リナは僕の袖をつまんだ。


「はぐれると困るでしょ?」


「・・・・・。」


「レイシア?」


レイシアが僕の足元にくっついてきた。


「怖くない、こわくないもん・・」


深い霧で数メートル先が見えない。

僕たちは離れないように移動することにした。


『次右、右行く』


スラリンは森の案内をかってでていた。

魔物だけあって、ここら辺は詳しいのだろうか。

目的地は森の奥らしいのだ。


「右に行くといいの?」


『道知ってる。教える』


僕らはスラリンに言われるまま、右に曲がった。


「止まって」


レイシアの声で僕たちは止まった。

数メートル先にブラックベアが寝ていた。


「おおう・・」


かなり大きいな。

数メートルあるだろうか。

襲われたらひとたまりもない。

ブラックベアを起こさないようにそ~っと通り過ぎる。


パキン


僕は枝を踏んで折ってしまった。



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