第8話 当初の目的
「わぁ、忘れてた!」
朝レイシアが叫んだ。
僕はベッドの上で薄目を開けた。
「どうしたの・・」
「すっかり猫生活に慣れてきちゃって・・忘れてた・・私、フィルに手伝ってほしい事あったのに」
落ち着かない様子でうろうろ歩き回っている。
人間なら立って歩きまわっている感じだろうか。
猫だとそう見えないからおもしろい。
ぷっ
僕は笑ってしまった。
「何笑ってるのよ」
「ごめん」
僕はベッドから起き上がり、ベッドに腰かける。
「話が・・あるの。聞いてくれる?」
レイシアが僕をじっと見つめて、少しずつ話し始めた。
**
私は恋人のアーロンと、マノリ村に住んでいた。
ある時、女性が道で倒れていて助けてあげたの。
「ご親切に有難うございます」
彼女はラズベルと言い、占い師らしく頭にはフードを被っていた。
アーロンと一緒に看病をしたわ。
しばらくして、すっかり元気になったラズベルは私を外に連れ出した。
是非お礼がしたいって言って。
村のはずれの小屋の中、私はラズベルと二人きりだった。
「こんなところで、どうしたんですか?」
油断していた私は、床の魔法陣に気が付かなかったわ。
周りの景色が歪んだように見えて・・次の瞬間、体が縮んでしまった。
最初は何が起こったのか全く分からなかったの。
「アーロンはいい男ね。大丈夫もらってあげるから」
ラズベルはそう言って、何処かへ行ってしまった。
私はしばらく放心状態だったと思う。
気が付いたときには声も出なくなっていて、どうしようも無くて・・。
しばらくしたら、喋れるようにはなったんだけどね。
それから、家に行ってみたけど・・中に入る勇気が無かったの・・。
**
「最近やっと元の姿に戻る方法が見つかって、どうやら深淵の森にアイテムがあるみたいなのよね・・さすがに猫の姿じゃ難しくて・・」
レイシアはその時の事を思い出したのだろう、すごく辛そうだった。
僕は思わず、レイシアを抱きしめていた。
「元の姿に戻りたいの。協力してくれる?」
恐る恐る、言葉を紡ぎ出すレイシア。
深淵の森か…あまり良い噂は聞かないけれど。
「僕に出来ることなら」
不思議と僕は頷いていた。
あの森は普通の冒険者でも近づかない森で有名だ。
色々と準備をしていかないといけない。
僕は冒険者ギルドに行って情報を集めてみることにした。
****
「止めたほうがいいわ」
開口一番、冒険者ギルドのマリアさんに言われた。
「行くのなら、誰か腕の立つ人を連れて行ったほうがいいわね。誰も受けたがらないと思うけど」
霧がいつも発生していて、視界が悪いところらしい。
昔からあの森は良くない噂が絶えないらしく、冒険者は行きたがらないらしい。
魔力が無くなるとか、行方不明になるとか。
毎年、行方不明になっているのは本当らしいけど。
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