第7話 調子に乗った

僕は家で興奮して話していた。


「スラリンが喋ったよ!」


「ティマーの能力ってよく解らないのよね。人数も少数みたいだし」


そうなのか。

レイシアさんでも知らないことがあるんだな。


「良かったじゃない。餌は何を食べるのか聞いてみたら?」


そうだな。

何を食べるんだろう。


「スラリンって何を食べるの?」


『何でも食べる。葉っぱ、虫・・』


安上がりで助かった。

葉っぱとかなら拾ってくればいいかな。


『今度一緒、行って欲しい。その時食べたい』


「うんうん。今度一緒に行こう」


レイシアが僕とスラリンを交互に見ていた。

どうしたんだろう。


「何喋ってるか、解らないから嫌だわ」


「そうだよね。もしかしてさ・・ティムすればレイシアも言葉通じるんじゃない?」


「え?まさか・・ちょっとやめなさいよ」


『ティム』


淡い光がレイシアを包み込む。


「出来ちゃった・・」


出来るかな?とは思ってはいたけど。


「もう、何てことしてくれんのよ・・スラリンひどいご主人様だと思わない?」


『酷い?ティム出来るレイシア許可した』


「え・・・私が望んでいたっていうの?」


「あ、喋れてる良かった」


「良かったじゃないわよ。今度?からちゃんと許可を取りなさいよね。そういうとこあるよねご主人様って」


「ご主人様?」


レイシアに少し違和感を感じる。


「ご主人様はご主人様よ・・ってあれ?名前が言えない?」


レイシアが涙目になっていた。

ティムしたことで、僕の呼び名がご主人様になってしまったようだ。


「え?何で?僕の名前が言えなくなった?」


「ティムされたからでしょうが!しかもおかしなことに、そっちの方が違和感なく言えるって・・何とかしてよ」


『ティム解除』


僕は試しに、レイシアに手をかざして解除してみた。

今度は光らないみたいだ。


「あ、あれ?元に戻った?フィル、フィル・・良かったぁ」


「良かった解除出来たみたいだ。ごめんね。不快にさせたみたいで、スライムと言葉が通じるから良いかと思ったんだけどね」


「フィルって、優しいんだか酷いんだか訳わかんないわね。疲れたから寝るわ」


レイシアは、お気に入りのソファの上で丸まって寝てしまった。



****



今日も何だか疲れたわ・・話が出来るから寂しく無くなったけど・・何か大事なことを忘れているような・・?

うとうとした意識の中で私は思った。

平和な日々がいいわ~。

しばらく猫をしていると、それが当たり前の生活になってきていた。


人間であったことを忘れてしまいそうだ。

私は、心地よい眠りに誘われていった。




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