第6話 名前

あたしはマリア、冒険者ギルドの受付をしている。

筋肉質の男性が好きで、冒険者ギルドで働いているのだ。

冒険者ギルドここだったら、がっちりした体系の男性が多いだろうと思ったのだ。

あたし好みの人と恋人になれたら・・とか思っていたのだけど。


「初めてじゃないですか?魔物討伐、頑張ってくださいね。無理なら早めに帰ってきても良いんですよ?」


今日・・いつも薬草採取しかしない冒険者の人が、いきなり討伐依頼の紙を持ってきた。

怯えて、自信なさそうに。

後でキャンセルするだろうなと内心思っていた。

だって、スライムを一度も倒したことが無かったんだよ?


その日の午後、彼は討伐したゴブリンの部位を持って現れた。

え?いったいどういうことなの?

今まで戦えるけど、あえてしなかったってことなの?

あたしは少し固まっていた。


「受付お願いします」


彼、フィルは見た目は弱そうな優男で15歳の子供だ。


「す、すみません。今手続きしますね」


あたしは慌てて受付をする。

ゴブリン6匹分の討伐・・を確認した。

今まで実は強かったけど隠していたとか?

初心者でも、だいぶ手こずるモンスターだったはずだ。


「お待たせしました。報酬額になります」



****



僕たちは家に帰った。

テーブルの上に丸い水晶が置かれた。

猫になっても持っていた魔法は使えるみたいで、アイテムボックスから水晶を取り出したようだ。


出したりするのが、大変みたいだけど。

レイシアに言われた通り、水晶の上に手を当てた。

レイシアは水晶をじーっと覗き込んでいる。


「はぁ」


「レイシアさん、どうしたんですか。ため息ついて」


「あ~悪いのだけど、フィルは魔法の適性無いのよね。以前鑑定してもらったって言ってたじゃない。そのままだったわ」


火とか水とかの魔法は使えないのか。

僕は少し期待していただけに、かなりがっかりした。


スライムがひょこと顔を出した。

どうしたの?と言いたげな感じだ。

今日は家に置いてきたから、暇だったかもしれないな。

話が出来たら面白いのに。


『・・・・』


「ん?何か言った?」


「いいえ?」


何か聞こえたような気がしたんだけど。

そういえば一緒に暮らすんだし、名前付けようか。


「えと、スライム・・スラリンとか?スラリンにしよう。今日からお前はスラリンだよ」


「また、安直な・・」


スライムに淡い光が包まれる。


『名前、スラリン♪』


スラリンがひょこひょこ動いた。

凄く楽しそうに。


「ん?スラリンが喋った!」


「私には聞こえないけど・・」


どうやら僕にだけ、聞こえるようになったみたいだ。


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